第3回62歳で主婦から医師に 猛勉強で「一番戻りたかった場所」へ

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江戸川夏樹
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 仙台市の自宅で、医学部に入学したばかりの長女が、目を輝かせながら話している。

 講義の面白さ、実験の詳細。長女の話を聞きながら、30年前のあるにおいがよみがえってきた。

 大学時代に使っていた実験室。「不純物が混入しないように、実験台はよく磨いて」。そんな教授の注意を聞きながら嗅いだ硝酸や塩酸のつんとする刺激臭

 かつての自分が長女の話を通して、よみがえる。

 「青春時代の思いに火がついた。そして、私にはまだエネルギーが残っている」

 当時51歳。専業主婦だった安積雅子さん(84)が、医師を目指すと決めた瞬間だった。

 宮城県で育った。父は5歳の時に亡くなり、母が洋裁の仕事をしながら、女手一つで4人姉弟を育ててくれた。終戦は小学1年の時。「人生は何が起こるかわからない。いつでも生計を立てられる仕事を」。そう考え、資格を取れる薬学部に進学した。

 何よりも興味を持ったのが実験だ。薬がどう人体に影響するのか。推理しながら、学ぶことが楽しくて仕方なかった。

 卒業後は、「結婚するまでは実家から離れてはいけない」との家訓に従い、近くの科学研究所へ就職。28歳で結婚してからは、専業主婦として4人の子どもを育てた。

 だが、心残りがあった。「このまま主婦として過ごしていいのだろうか」。何度も何度も頭をよぎった疑問を、長女との会話が後押しした。

 医学部を目指そう。

■30年ぶりの受験勉強 5年…

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    平原依文
    (社会起業家・SDGs教育支援会社代表)
    2022年8月16日9時24分 投稿
    【視点】

    学びに年齢は関係ない。学ぶ意欲と好奇心があれば、人間何歳になっても学び続けられる。 安積さんのような「人生を自らの力で切り拓く人財」と、その挑戦を「応援する家族」が増えれば、子供たちももっと自分らしい進路やキャリアを選ぶことができると思い