ペロシ米下院議長が2日夜、台湾を訪問した。中国は軍事行動を示唆してまで訪台を阻止しようと動いた。中台統一を「悲願」とする習近平(シーチンピン)国家主席にとって、米国による台湾への介入が続く状況は認めがたい事態だ。ただ、ペロシ氏の訪台にこれほど反発するのは、いまの中国特有の事情がある。
ペロシ氏の台湾訪問が伝えられた7月下旬以降、中国側は外務省のほか国務院台湾事務弁公室、国防省の報道官らが「中国は座視せず、必ず強力な対抗措置を取る」などと少なくとも8回にわたって非難を繰り返し、計画を見直すよう求めてきた。
1日夜に米台メディアが「2日訪問」の見通しを報じると、その動きはさらに加速した。環球時報前編集長の胡錫進氏は同日、ツイッター上で「台湾に行けばいい。ただし、出発前に旅の安全を祈ることだ」と警告。また、台湾メディアによると2日朝、中国軍機が台湾西南域の防空識別圏(ADIZ)に2回進入したという。
ペロシ氏の訪台は、そもそも4月に計画されていたものの、新型コロナウイルスに感染したため延期した経緯がある。
この時も中国側は、王毅(ワンイー)国務委員兼外相が「中国の主権に対する悪意のある挑発であり、極めて危険な政治的シグナルを発している。結果の責任は米国が担うことになる」などと強い言葉で非難していたが、強い動きには至らなかった。
一方、今回は軍が積極的に関与している点で危険レベルが高まっている。
ペロシ氏の台湾訪問計画に、習氏ら共産党指導部がこれほど強い姿勢で抵抗を示した背景について、中国外交筋は「二つの意味で『最悪のタイミング』だった」と表現する。
二つの意味で「最悪のタイミング」
その上で、「それは短期・長期の視点に分けられる」と指摘した。
一つ目は、習氏自身にとって…
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- 【視点】
ペロシ氏の訪台が政治的に賢明なものであったか疑問は残るが、そこが主題だろうか。この記事にあるように、中国側が必ず対抗するなどとステークを上げ、振り上げたこぶしのやり場を見つけねばならない状況にみずから追い込んだ面もある。 より問題なの
- 【視点】
中国共産党は台湾を統治したことはなく、70年以上にわたり中台分断統治が続いてきました。中国が台湾のことをとやかく言うのはおかしい、と考えるのは自然だと思います。一方で、中国は日本やアメリカとは全く違う考え方で行動している、ということも理解