「打倒・大阪桐蔭」の攻防に注目 甲子園出場49校の戦力を総力取材

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 深紅の大優勝旗を手にするのはどこか。第104回大会は6日、阪神甲子園球場で開幕する。全国3547チームが参加した地方大会を勝ち抜いた49校。取材にあたった担当記者が、その戦力を探った(座談会の実施は7月31日)。組み合わせ抽選会は3日午後4時から行われる。

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 座談会は記者の安藤嘉浩、安藤仙一朗、山口裕起、酒瀬川亮介、編集委員・稲崎航一で構成されています。

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大阪桐蔭 春夏連覇へ投打充実

 記者C 3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭が充実しているね。

 記者A ともに右腕で球威のある川原嗣貴(しき)と別所孝亮、制球力の高い左腕の前田悠伍ら投手陣の状態がすごくいい。大阪大会は計5投手で7試合54回を投げてわずか1失点だった。選抜で11本のチーム本塁打記録を打ち立てた打線も、3番松尾汐恩(しおん)、4番丸山一喜(いっき)を中心に春よりもスイングが鋭くなった。死角はなかなか見当たらないね。

 記者B 昨秋の明治神宮大会の優勝を含め、秋、春、夏を制すればチームとして初の快挙となる。「打倒・大阪桐蔭」で向かってくる相手をどのようにはね返すかに注目したい。

 記者D 対抗の一番手はどこ。

 A 公式戦で大阪桐蔭に唯一、土をつけた昨夏の王者・智弁和歌山だろう。5月の近畿大会決勝で3―2で競り勝ち、大阪桐蔭の公式戦連勝を29で止めた。4投手の継投で相手打者の目先を変える作戦が成功したんだ。攻撃力も高く、昨夏の甲子園決勝で本塁打を放った3番渡部海や積極性が持ち味の1番山口滉起は、ともに和歌山大会で3本塁打。2004、05年の駒大苫小牧(南北海道)以来の連覇をめざす。

 記者E 激戦の神奈川を勝ち抜いた横浜も、しぶとさが戻ってきた印象だ。バントや右打ち、盗塁などを絡めた攻撃で得点能力は高い。昨夏、1年生で甲子園のマウンドを経験した左腕の杉山遥希も変化球のキレが増し、投球術が備わった。

 C ライバルの東海大相模に決勝でサヨナラ勝ちし、チームの雰囲気もよさそう。近年は甲子園でなかなか上位まで勝ち進めていないが、春3度、夏2度の全国優勝を誇る強豪の意地にも期待したいね。

 B 昨夏4強で今春の選抜準優勝の近江も楽しみだ。

 A エースで4番、主将も担う山田陽翔がチームの大黒柱。直球と同じような球筋から鋭く曲がるカットボールは一級品だ。できれば山田の体調が万全なうちに大阪桐蔭と顔を合わせたい。2番手以降の投手が成長すれば、滋賀勢として初の頂点も見えてくるよ。

追う10校 愛工大名電に九州国際大付

 B 昨夏4強の京都国際も有力だね。選抜は、新型コロナの集団感染で出場を辞退している。夏に期する思いは強いはずだよ。

 A エース左腕、森下瑠大は左ひじの故障で出遅れたけど、打撃で3本塁打と引っ張った。右腕、森田大翔が成長したことも大きい。

 E 愛工大名電は、全国最多175チームが参加した愛知を勝ち抜いた。打線は打率4割超えの選手が6人もいて、切れ目がない。左腕の有馬伽久(がく)は145キロ前後の直球を投げ込み、攻守にレベルが高いよ。

 D 選抜8強の九州国際大付も、評判が高いね。3本塁打の佐倉俠史朗を筆頭に、強打者がそろっている。春から打順が変わり、つながりが良くなった。投手陣も2年生の池田悠舞が決勝で完封し急成長を見せるなど、厚みが出ている。

 A 明豊も、5試合で52得点を挙げた打線は強力だよ。25四死球、10犠打、16盗塁と小技や機動力を使った攻撃もできる。昨秋の九州大会で九州国際大付にコールド負け。そこから、つなぐ意識を徹底している。

 B それなら日大三も6試合で74得点と、圧倒的な成績で西東京を制した。先頭を打つ藤巻一洸の6割1分9厘を筆頭に、チーム打率は4割を超えている。相手投手は息つく暇がないよ。

 E 春夏連続の山梨学院にも注目したい。こちらもチーム打率4割超で、各打者が状況によって逆方向に打つことができる。エース右腕の榎谷礼央は、どの球種でもストライクがとれる。

 B 全国制覇がない地域で、悲願の初優勝をねらっている実力校もあるね。

 C 北陸初の全国制覇を目指す星稜は、選抜でも8強入りしている。マーガード真偉輝キアン、2年の武内涼太の両右腕は、ともに最速140キロ超の直球に、変化球のキレもある。

 A 仙台育英は、東北で最も深紅の大優勝旗に近いチームだ。最速145キロのエース左腕、古川翼を筆頭に、投手陣が豊富。二遊間を中心に守備も堅いよ。

 D 興南は最速147キロ右腕の生盛亜勇太(あゆた)、俊足好打の禰覇(ねは)盛太郎ら投打の軸がそろっている。沖縄本土復帰50年の節目の年に、我喜屋優監督も気合が入っているはずだ。

 C 公立校の社(やしろ)は、激戦区・兵庫を勝ち抜いての初出場だ。芝本琳平、堀田柊の両右腕を軸に守り勝つのが身上。3月の大阪桐蔭との練習試合は、1―2で惜敗とあなどれない。

多い実力校 天理に二松学舎大付

 E 春夏連続や2年連続出場の実力校も多いね。

 C 鳴門は選抜大会1回戦で、優勝校の大阪桐蔭に1―3と健闘した。その立役者となったエース左腕の冨田遼弥が徳島大会4試合を1人で投げ抜き、計4失点と安定している。

 A 天理も春から一回りレベルアップしたよ。奈良大会は全5試合で7点差以上をつけて勝った。長身右腕の南沢佑音の球威が増し、打線に長打力のある1年生が2人加わった。

 E 日大三島も成長を感じる。右腕松永陽登は打者の手元で変化する球が武器で、好打者でもある。報徳学園で選抜優勝経験もある永田裕治監督が率いる。

 C 3季連続出場の二松学舎大付には今年も好左腕がいる。エース辻大雅は制球がよく、チェンジアップが効果的だ。

 D 明秀日立は茨城大会6試合で55得点の強打が売り。土浦日大との決勝は九回2死からサヨナラ2点本塁打で勝った。三塁手の小久保快栄は小久保裕紀・ソフトバンク2軍監督のおいだ。

 B 聖光学院は好走塁やスクイズで得点するなど、試合巧者ぶりが光る。

 C 昨夏も出場した日本文理の田中晴也は150キロ右腕。打者としても評判が高く、注目を集める。

 E 明徳義塾も昨夏の甲子園で好投した変則左腕の吉村優聖歩が健在だ。ベテラン馬淵史郎監督の采配も楽しみだね。

 A その明徳義塾に昨夏サヨナラ負けした県岐阜商も2年連続出場。投打とも力のある選手がそろう。

 B 4年前に8強入りして以来の出場となる下関国際も評判が高い。遊撃手の仲井慎が準々決勝から決勝まで投げた。

 D 鹿児島実は春の九州王者・神村学園、選抜出場の大島などに競り勝って出場。エース左腕の赤崎智哉が巧みな投球をみせる。

 C 創志学園は長沢宏行監督が今夏限りで勇退することもあり、選手の結束力は高いよ。右横手の岡村洸太郎は球威がある。

旋風なるか 札幌大谷や樹徳に聖望学園

 C 創部14年目で初出場の札幌大谷は打線がいい。チーム打率は4割超えで上位、下位のどこからでもチャンスをつくれる。

 A 高松商もチーム打率は4割台だね。1番の浅野翔吾は長打力があるうえに俊足も持ち味だ。

 B 鶴岡東も山形大会を圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきた。5試合で1失策と守備も堅い。

 D 関東には優勝候補をなぎ倒してきた勢いのあるチームが多いね。

 E 樹徳はノーシードから群馬の「私学3強」と言われる前橋育英、桐生第一、健大高崎を次々と破った。一回の先制攻撃で主導権を奪う試合が目立つね。

 A 聖望学園もノーシードだったが、埼玉大会決勝で春の選抜4強で関東王者の浦和学院を1―0で破った。接戦に強そうだ。

 C 11大会連続出場を狙った作新学院を栃木大会準決勝で破った国学院栃木は伝統の機動力が健在だ。6試合で15盗塁。セーフティースクイズなど小技も使える。

 D 広島の盈進(えいしん)は48年ぶり。守りのチームと言っていい。3年生5人の投手陣でチーム防御率は1・24。守備も7試合で7失策と安定している。

 E 八戸学院光星も6投手の継投で勝ち上がった。エース洗平歩人の弟、洗平比呂も投手で青森大会では兄弟リレーもあったよ。

 B 市船橋にも注目の兄弟がいる。双子の森本哲太と森本哲星だ。兄の哲太は中軸を打ち、弟の哲星はエースで投打の中心を担う。

 A 敦賀気比は投打のバランスがいい。チーム打率は4割近いし、大黒柱のエース上加世田頼希は福井大会で防御率0・70だ。

 D 長崎の海星も似た感じのチームだね。打線には集中打があるし、タイプの違う2投手をそろえ、どちらも完投能力がある。

 C 三重はエース上山颯太が右肩痛から復調した。単打を重ねる打撃で1試合平均得点は7点を超える。

勢いに注目 帝京五や佐久長聖

 D 九州学院は現ヤクルトの村上宗隆が1年だった第97回大会以来の甲子園。弟の慶太が4番を打つ打線は、集中打が持ち味だ。

 A 5大会連続出場の高岡商も打線がいい。氷見との壮絶な決勝戦を12―11で制した。昨夏の甲子園を経験した4番の近藤祐星らがチームを牽引(けんいん)する。

 B 能代松陽は能代商だった時代に2勝した第93回大会以来の出場。本格派右腕の三浦凌輔を擁し、攻守に粘り強く戦う。

 C 春夏連続の有田工は1番エースの塚本侑弥が投打でチームを引っ張る。5試合で22犠打の小技を使い、好機でたたみかける。

 D 富島も最速148キロ右腕の日高暖己が二刀流で活躍。全5試合をほぼ1人で投げ、3番打者としても5割近い打率を残した。

 E 花巻東と盛岡大付の2強時代が続いた岩手は、一関学院が12年ぶりの代表に。6試合で3本塁打の4番・後藤叶翔を筆頭に計10発の強力打線が頼もしい。

 B 佐久長聖は7試合で27犠打。主将で4番の寺尾拳聖を中心にしぶとい野球で、ノーシードから7試合を勝ち切った。

 A 複数投手を擁するチームも増えた。帝京五は積田拓海―国方蓮の継投を確立し、打線も活発。元ロッテ投手・小林昭則監督のもと、初出場をつかんだ。

 E 旭川大は池田翔哉、山保亮太と大型右腕2枚を擁する。来春から校名が変わる予定。現校名では最後となる夏の甲子園で、29年ぶりの勝利を目指す。

 C 浜田は左腕・波田瑛介から右腕・森井空翔への継投で、18年ぶりの出場を果たした。攻撃陣は5試合で19盗塁の足技を駆使する。

 A 昨夏は決勝でサヨナラ負けの鳥取商は、延長十四回タイブレークの末に11年ぶりの甲子園を決めた。山根汰三、岩崎翔の小刻みな継投策がおもしろい。

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