戦争はひとごとじゃない 朝日歌壇の投稿5万首から浮かぶ市民の思い

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佐々波幸子
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 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続き、朝日新聞の短歌投稿欄「朝日歌壇」にも戦禍を憂える作品が並ぶ昨今。朝日歌壇の過去の入選歌を分析し、人々の戦争への思いは新聞歌壇にどのように投影されてきたのか、振り返ってみた。

2003年、イラク戦争への無力感

 朝日新聞デジタル上で公開が始まった「朝日歌壇ライブラリ」には、1995年5月から2022年6月までの朝日歌壇の入選作品から約5万首が収録されている。この「ライブラリ」を使って、「戦争」という言葉が含まれる短歌を検索してみた。

 年ごとにみると、「戦争」という言葉が含まれる歌が最も多く朝日歌壇に登場したのは03年。イラク大量破壊兵器を保持しているとして米国が攻撃に踏み切り、イラク戦争が勃発した年だ。

 《戦争がはじまりましたと子らに告ぐ二年二組の最後の授業 山地千晶》(03年4月13日)

 《戦争を知らぬ我らがテレビ見て戦争しか知らぬ子らを見ている 根岸優子》(03年5月5日)

 開戦3週間で米英軍が首都バグダッドを制圧したが、その後も戦闘は続き、日本のメディアも連日報じた。現地の状況に胸を痛めながら、どうすることもできない無力感が投稿歌に表れる状況は、ウクライナの状況に思いをはせる作品が多く投稿される昨今の状況にも通じる。

2015年、戦争は身近な危機になった

 だが、朝日歌壇ライブラリのデータを見ていくと、戦争にかかわる投稿が多いのは海外で戦争が起こった年ばかりではないことも浮き彫りになってくる。

 03年に次いで「戦争」という言葉を含む歌が朝日歌壇に掲載されたのは、2015年だ。

 《戦争をさせないデモへ行く夕べ君と食べてるカレーの平和 白倉眞弓》(15年7月27日)

 《「戦争なんてする訳ないじゃん」十八の俺も思っていたよ娘よ 伊藤流水》(15年8月16日)

 この年に多く詠まれたのは、9月19日未明に成立した安全保障関連法をめぐる歌。法案審議の行方に異議を唱えるかのように、初夏から夏にかけて多くの歌が届いた。

 「いま声をあげなければ、大切な人との暮らしがおびやかされてしまう」という切羽詰まった思いが、投稿歌ににじむ。戦火が海の向こうの出来事ではなく、身近な危機として日本の人々に意識されたのがこの年だった。

AI検索でみる「テロ」と「戦争」

 もちろん、「戦争」という言葉を含む短歌ばかりが戦争への思いをうたっているとは限らない。短歌では説明的な表現はなるべく避けたほうがよいとされ、歌のなかに主題となる言葉が含まれない場合も多いからだ。

 AIを使って類似した内容の短歌を検索できる「朝日歌壇ライブラリ」の機能を活用して、戦争に関連する短歌をさらに見ていくと、イラク戦争の03年には次のような作品があった。

 《自らは戦場に征(ゆ)かぬ…

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