第19回防衛費増額の意味を問う(上) 全力発揮は「数カ月」と元防衛省幹部

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聞き手・牧野愛博
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 政府は7月29日、2023年度予算の概算要求基準を閣議了解し、増額が焦点になっている防衛費は金額を示さずに要求することになりました。6月に閣議決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」は「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記しています。防衛費増額の意味について、防衛省海上幕僚監部防衛部長として予算要求にも携わった渡辺剛次郎元海将に聞きました。

今年の概算要求、金額の提示不要に

 ――防衛費の予算要求はどのような流れになっているのですか。

 私が現役時代は毎年5~6月ごろ、財務省との間で「この金額以上の要求は認められませんよ」という大体の予算枠(シーリング)の調整がありました。防衛省内でその枠の範囲内で議論(ケーススタディー)を行い、7月に担当局長、8月に大臣の了承を得て、同月下旬に概算要求をするという流れでした。

 22年度の概算要求額は約5兆5千億円で、最終的な当初予算額は要求額の94・5%にあたる約5兆2千億円になりました。ここ数年は、最終予算額が概算要求額の95%前後に落ち着くケースがほとんどです。

 ところが今年は、防衛費については要求基準の金額を示さず、防衛省が必要な予算項目を提出する「事項要求」が認められました。私が聞いている範囲でも、省内で「何が必要になるのか」「財務省が納得する説明とは何か」という議論が行われているようです。

 ――三木武夫内閣が1976年11月に閣議決定して以降、防衛費はGDP(国内総生産)比で1%程度に収められてきました。

 これに従う場合は、予算額はGDPの影響を受けます。防衛予算は02年度から10年間、ずっと減り続け、12年度予算は約4兆6千億円でした。その後、V字回復をして19年度予算から毎年、過去最高額を更新してはいますが、全体額で見れば、この間、プラスマイナス5%程度の増減に過ぎません。

 実質的にはバブル経済崩壊後の1990年代後半から続くデフレスパイラル、GDP停滞のなか、防衛費が抜本的に増えたというわけではないと言えます。

 他方、中国の国防費は公表ベースですが、過去30年間で約39倍、過去10年でも2・2倍の伸びを示しています。中国の年間国防費は日本の5倍近くになる24兆円超になっています。

十分な継戦能力「あるとは言えない」

 ――防衛費の現状は自衛隊の現場にどのような影響を与えているのですか。

 防衛省・自衛隊は基本的に…

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