モンテスキュー「法の精神」 三権分立や法の支配の源流?
権力をふるう王や貴族、宗教者に対し、多くの市民がもの申す民主主義勃興の時代。18世紀フランスの思想家シャルル・ド・モンテスキューは国の権力構造を考えた。主著「法の精神」で示したのは、一国内に複数の権力が分立し、法の支配にもとづき互いに抑制・均衡する構想。統治機構のあり方を歴史に学ぶ。
議会が内閣を信任する議院内閣制をとる日本では近年、長期政権下で首相官邸の力が強い。国政選挙の与党候補公認や官僚の人事に影響力を行使し、政権の意向はときに内閣法制局や検察、日本銀行などにも及ぶ。平成の政治が政治主導を目指した帰結だ。
ただ、教科書に載る民主政治の基本原理は「三権分立」。国民主権の下で国の政治は立法、行政、司法が互いに影響しあって動く。その思想的な源は執筆約20年の大著、「法の精神」とされる。
モンテスキューはフランスの地方貴族出身で、太陽王ルイ14世と後継のブルボン朝最盛期、強大な王権の時代を生きた。匿名で書いた「ペルシア人の手紙」で対外戦争に明け暮れる王政を批判し、時の人に。「ローマ人盛衰原因論」では自由を維持する共和政の機構を論じた。
1748年に出版した「法の精神」1編1章冒頭は、法律を「事物の本性に由来する必然的な諸関係」と定義する。日本学術振興会特別研究員の上村剛さん(政治思想史)は「法や政治を関係でとらえている。社会学の祖、モンテスキューの思想の片鱗(へんりん)が垣間見える」という。
上村さんは昨年刊の著書「権力分立論の誕生」(岩波書店)で大著が後世に与えた影響をつぶさに検証した。
大著は2年で英訳された。思想家自身が現地で見た当時のイングランド国制、特に議会の仕組みを高く評価(11編6章)しており、英語圏で広く読まれた。上村さんは「思想家が論じたのは執行権をもつ国王に対し、貴族や平民も立法に関与し、拒否権を用いて国王の暴走を防ぐ混合政体。政治全体の権力分立のアイデアは、その芽が見つかる程度だった」と見る。
55年に思想家が世を去り、その思想は意外な広がりをもつ。
大英帝国本土で貴族が担う司…
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