新進の英デザイナー、巨大ファッション企業と「働きたくない」理由は

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聞き手=編集委員・後藤洋平
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 自身のブランドを興し、広く支持を得て大手メゾンのデザイナーに就任する。ジバンシィやクリスチャン・ディオールを率いて、現在はメゾン・マルジェラを手がけるジョン・ガリアーノ。ジル・サンダーやディオールなどを経てプラダの共同デザイナーに就任したラフ・シモンズ。近年ではルイ・ヴィトン(LV)のメンズを手がけた故ヴァージル・アブローのように、ファッション界ではそうした道のりを歩むことが、デザイナーとしての一つの成功例とされている。

 ロンドンの名門、セントラルセントマーチンズ美術大在学中から注目され、卒業後間もない2017年にコレクションデビューを果たしたブルガリア出身のデザイナー、キコ・コスタディノフは、その有力候補の一人といえる。7月下旬、協業相手アシックスとの打ち合わせで来日した本人に今後のキャリアについて聞くと「LVMHや(グッチなどを擁する)ケリングなど、巨大ファッショングループのもとでは働きたくない」「ファッション界の商業至上主義は、コロナ後も変わらないだろう」と吐露。理由を聞いて、ファッションに対する真面目な姿勢と情熱を感じた。

          ◇

 ――ミニマルかつ構築的な服づくりで評価を得てきましたね。着想源は?

 旅行で感じたことや、目にしたものなど。シーズンによりますよね。現実的なこと、ファンタジー、本で知ったこと、映画……。場合によって、色んなことからですよね。定まったものはありません。ひとつ言えるのは、「ただの会社としての、商業的な仕事」にはしたくないということです。

 ――ブランドのロゴを前面に出すなど、モード界では近年、分かりやすいクリエーションが増えていますが、あなたの服は、そうではありません。

 色んなファッションデザイナーがいて、色んな種類のデザインをする人がいます。その中には、ファッションの専門的な教育を受けていない人もいるのが事実。一方で、私は専門教育を受けてきた。その影響は大きいでしょう。あと、私はグラフィックを使うのは、あまりうまくないんですよね(笑)。

 ――セントラルセントマーチンズの在学中から注目を浴び、王道の若手デザイナーと認識されています。卒業製作のコレクションも、当時から話題になっていましたよね。

 おそらく僕たちが、セントラルセントマーチンズでの卒業コレクションがすごく大事だった最後の世代でした。今のように、誰もがインスタグラムを使っていたわけではなかったから、みんな卒業コレクションに対して、すごく努力をしなければいけなかった。

 対して今の学生たちは、在学中に既に自分のブランドを持っていて、インスタグラムで宣伝もできる。卒業する頃には既に3年間も会社を続けている人も珍しくありません。もはや、当時と今のファッション界では完全に「違うゲーム」が展開されているんです。

 そういう意味では、僕は卒業コレクションの発表後にドーバーストリートマーケット(コムデギャルソンが運営する、世界的なセレクトショップ)と一緒に仕事ができて、自分のブランドを作ることになり、すごく幸運でした。もちろん僕の会社は、まだとても若い。たった5、6年しかやっていない。赤ちゃんみたいな会社です。

 ――メンズコレクションはロンドンからパリに発表の場を移しましたね。その理由は?

 ロンドンでメンズの新作を発表しても、バイヤーも来ないしプレスも来ないという状況です。だからロンドンでショーをした後、バイヤーやプレスが集まるパリで毎シーズン、展示会を開く必要がありました。それならショーもパリで開いたほうがいい。必然です。

 ロンドンは、ファッションの勉強をするにはいいけれど、会社を運営していくには難しい。ロンドンにいると考え方が若くなり、パリでは本当のビジネスができる。だから今、僕はパリに住むためにアパートを探しています。両方に拠点を持ち、半分ずつ生活したい。今はレディースのコレクションはロンドンで発表しているけれど、いずれはどちらもパリで開催したいと思っています。

 ――ファッションデザイナーのキャリアの到達点の一つは、ビッグブランドのクリエーティブ・ディレクター就任だと考えられています。あなたは実績からして、その有資格者だと思う。自分のブランド以外で、手がけてみたい大きなブランドはありますか?

20代で脚光を浴びた注目のデザイナー、キコ・コスタディノフは「大手メゾンで働く友人もいます」としたうえで、その働き方が「とても健康的とは思えない」と吐露しました。その理由や、今後の自身のキャリア、コロナ禍後のファッション業界について聞いたところ、とてもストレートな答えが返ってきました。記事の後半で詳しくお伝えします。

 そういった場所で働いている…

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