第2回「克己」の稽古、掃除、ランニング 戸惑いと去る者と 6月・修業

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井上秀樹
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 「イッ!」「イッ!」「ニッ!」「ニッ!」「サン!」「サン!」「シッ!」「シッ!」

 男たちが輪になり、中心に向かってひたすら木刀を振り続けている。6月、無名塾では今秋の公演「いのちぼうにふろう物語」に向けた準備が始まっていた。

 舞台では後半に捕物の場面があり、男の役者は殺陣の稽古を受ける。刀の持ち方、構え方、足の運び方、攻め方、交わし方。けがにつながるとあって、激しい発破が次々と飛ぶ。

 32期生の3次審査を受けた13人のうち、7人が合格した。6月1日に入塾式があり、午後はさっそく「いのちぼうにふろう物語」の台本を、出演者が通して読んだ。江戸深川のならず者たちがお上と戦いつつ、あるきっかけで生きるよすがを見いだす。男4人は、毎日の稽古と同時に、週1度の殺陣稽古に入った。

 素振りを見ていた、9期生の西山知佐は言った。「あれ、きついのよね」。素振りが終わる。男たちの激しい呼吸がしばらく続く。倒れ込む新人もいた。西山は気づいている。「少しずつうまくなってる。(木刀が)当たらなかったのが、当たるようになってきた」と。

厳しい役者修業で知られる無名塾に、5年ぶりの新人が入りました。舞台公演もままならないコロナ禍、若者たちは何を懸けるのか。オーディションから「いのちぼうにふろう物語」の初舞台まで、青春の緊張を見つめます。

    ◆

 無名塾の新人は稽古場へ3年間通い、役者としての技術や芝居への向き合い方などを養う。無料で教えを受ける代わり、アルバイトは禁止。文字どおり、役者修業に明け暮れる。

 日曜を除き、毎日午前8時に集まる。掃除と発声練習の後、自主稽古に入る。掃除をして午後4時には稽古場を閉める。

 壁には「克己グラフ」が張られている。何時に来たか、どこを掃除したかを書き込む。

 自主稽古では「紙風船」をひ…

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