緊張高まる今、核兵器のない世界をつくる道は 国際シンポで議論

[PR]

 国際平和シンポジウム「核兵器廃絶への道~世界を『終わり』にさせないために~」が7月30日、長崎市長崎原爆資料館ホールで開かれた。ロシアのウクライナ侵攻で危機感が一層高まる中、「核なき世界」の実現に向けて私たちの進むべき道を探った。

シンポジウムの録画は、朝日新聞デジタルの特集ページ「核といのちを考える」(http://t.asahi.com/wggv別ウインドウで開きます)でご覧になれます。

「核戦争に勝者なし」 キンボール氏基調講演

 ロシアによるウクライナ侵攻によって、核兵器は戦争を抑止するものではなく、むしろ他国への侵略を容易にし、もし核保有国同士が戦うことになれば、誤算と誤解のリスクを高めるものだということが明確になった。

ダリル・キンボール 米シンクタンク「軍備管理協会」会長。バイデン政権や国務省などに幅広い人脈を持ち、核兵器の脅威を減らす様々な政策提言を行う。

 また、核保有国が非核保有国を攻撃することはないと繰り返し保証してきた安全保障を愚弄(ぐろう)したことで、核不拡散条約(NPT)体制に難題を突きつけた。

 広島と長崎に原爆が投下されてから77年。被爆者の証言を共有し、核戦争には勝者はなく、絶対にしてはならないことを、将来世代に理解させ、浸透させる必要がある。

 同時に、核抑止による国家安全保障戦略にはリスクが内在し、最終的には失敗するものであり、核戦争に陥らない唯一の解決策は、核兵器の廃絶だということを説明していかなければならない。

 ウクライナ情勢により、今回のNPT再検討会議で全会一致による最終文書採択ができなくても、圧倒的大多数の国々による共同宣言により、進むべき道を示さなければならない。

 日本を含むNPT加盟国は、中断されている米ロ間の核軍備管理対話の再開を強く求めるとともに、核兵器の使用は壊滅的な人道的結末をもたらすため、いかなる状況下であれ、核兵器使用の脅しをしてはならないことも明記するべきだ。

 近年の核軍縮における前向きな唯一の進展は、人道イニシアチブによって成立した核兵器禁止条約だ。これはNPTの核軍縮義務を促進し、核保有国に核兵器の削減や廃絶に向けた意味のある行動をとらせる圧力となる。今後、日本が核保有国と非核保有国との有効な「橋渡し役」になりたいのであれば、次回からの核禁条約締約国会議にも参加する必要があるだろう。

続いてパネル討論が行われました。4人が登壇し、キンボールさんもオンラインで加わって、核廃絶への道筋について議論が交わされました。

ロシアが核使えば全面戦争に

 ――ウクライナに侵攻したロシアは、戦争の激化を避けるために比較的小規模な核兵器(戦術核)を限定使用する、との核理論を持っているとされる。

 和田 被団協としてロシアに侵攻の即時中止を求める声明を出し、大使館の前で抗議行動をした。反応はなかったが、核が使われないよう抗議し続けるしかない。

 私たち被爆者は世界中に体験を届けてきたが、プーチン大統領をはじめ世界の指導者に届いていない。生存している被爆者の声や、過去の声を、本当に聞いていただきたい。

 吉田 ロシアが実際に戦術核を使用すれば、全面核戦争になる可能性が高い。一方が少数の核使用で戦争が終わると期待したところで、米側は反撃を止めないだろう。ただし、「戦術核による戦争のエスカレーション抑止」という理屈はロシアが公式に打ち出しているものではなく、むしろ西側がロシア脅威論を宣伝するために使っている面もある。

 樋川 核兵器が地球環境の存続に与える影響も考えるべきだ。世界が脱炭素や地球温暖化に一致団結して取り組むべき時に、核開発をやってる場合だろうか。

 ロシアのウクライナ侵攻により、脱炭素の流れの中にあった国々が再び化石燃料を必要としている。アフリカや中東では食糧不足という食糧安全保障の問題を引き起こした。こうした環境の観点から核兵器の問題を捉え直すべきだ。

和田征子 日本被団協事務局次長。1歳のとき長崎で被爆。国内外で証言を続ける。8月1日に始まった核不拡散条約再検討会議にも参加。

樋川和子 大阪女学院大教授。専門は核軍縮・核不拡散。外務省在職時の13~19年には軍備管理・軍縮・不拡散専門官を務めた。

金淑賢 韓国国家安保戦略研究院責任研究委員。東アジア国際政治などを研究。著書に「中韓国交正常化と東アジア国際政治の変容」など。

吉田文彦 長崎大核兵器廃絶研究センター長。元朝日新聞記者。ワシントン特派員などを経て論説副主幹。著書に「核解体」「核のアメリカ」など。

日本でも「核共有」議論、現実味は?

 ――日本国内でも、米国の核兵器を配備して共同運用するという「核共有」の主張が現れた。

 吉田 核共有の主張の裏には「非核三原則」を変えたいという思惑があるかもしれない。核を国内配備するので、「持ち込ませず」は消えることになる。

 ただ、核を向けられた国からの攻撃リスクをさらに高めるだろう。そもそも核共有は核不拡散条約(NPT)にそぐわないため、NPTを支持する米国が許さない。非現実的なアイデアだ。

 樋川 (主張する人は)多分…

この記事は有料会員記事です。残り3178文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら

核といのちを考える

核といのちを考える

被爆者はいま、核兵器と人類の関係は。インタビューやコラムで問い直します。[記事一覧へ]