「法令違憲」の判決、導いた43歳 心が折れて見えた別の闘い方

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阿部峻介
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 戦後の75年という最高裁の歴史のなかで、わずか11件しかない「法令違憲」の判決。超レアな司法判断を導いた43歳の弁護士は、小学生のときから理想に燃える少年だった。「社会課題を裁判から解決する」。その仕組みづくりにかける思いを聞いた。

 法律や条例に基づいて国や自治体がやったことではなく、それら法令そのものが「憲法に違反する」――。最高裁がそんな判断を示せば、国会はすぐさま法改正を迫られる。それだけ重い判決が5月に出た。

 事案は「在外国民審査訴訟」。最高裁の裁判官をやめさせるか国民が投票で決める国民審査について、海外に住む日本人は法に規定がないため加われない。「在外選挙」はできるのに、同じように重要な憲法上の権利を一段低くみて許されるだけの納得できる理由はない、というものだった。

 原告の1人でもあった弁護士の谷口太規さんは、法廷内でガッツポーズをしたい気持ちを抑えながら判決を聞いた。

 米国留学中に投票権がないことに気付き、仲間とともに提訴して4年。「時間はかかりすぎたけど、裁判を使って社会を変えられる」。そう確認した瞬間だった。

「世の中、単純じゃない」

 横浜のサラリーマン家庭に生まれた。小学校低学年の頃から、児童書や偉人の伝記をむさぼり読む文学少年。両親には毎週末に図書館に連れて行ってもらっていた。

 美しい地球で人間が手を取り合う。児童書が描くそんな理想郷が胸に刻まれすぎて、「現実社会との落差に敏感な子」だったという。中部地方を流れる1級河川・長良川河口堰(かこうぜき)が作られ始めた小学校の卒業前後、青春18切符を使って1人で現地を見に行った。卒業文集には「大人はきれいな川1本、残せないんですか」と書いた。

 父と同じ京都大学に進んでから「視野が広がった」。地球温暖化の防止策を決める国際会議(COP3)が京都で開かれ、ボランティアで会場に入った。環境保護のための最先端の議論を期待して行くと、発展途上国が自国の窮状を訴え、規制に反対していた。これも正論だと思った。「当たり前だけど、世の中は単純じゃないと。自分のなかの『正しさ』が揺らぎました」

「人々の共感」が社会を変える力になる――。大学卒業後、弁護士になった谷口さんは、挫折を経て気付きます。同性婚訴訟も支えたサイト「CALL4」とは。誕生の経緯を記事後半で紹介します。

 では何が正解なのか。卒業論…

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