• アピタル

出産で脳性まひ、補償されない子への救済策を 親たちが厚労省に要請

こぼれ落ちる子どもたち

久永隆一
[PR]

 出産に伴って発症した重度の脳性まひの子どもと家族に総額3千万円を補償する「産科医療補償制度」について、個別審査の手続きで補償の対象外とされた家族でつくる団体が5日、厚生労働省に救済の検討を求める要請書を提出した。制度の剰余金の一部を原資にした救済を求めている。

 産科医療補償制度は2009年にできた。出産時に重い脳性まひを負った子どもの介護や住宅の改修には多額の費用が必要で、この負担軽減が目的の一つだ。

 だが今年1月に補償の対象範囲が変更され、課題が浮上した。それまで28週から32週未満で生まれた早産などの場合には個別審査が必要で、出産時の低酸素状態などの基準を満たさないと補償の対象外とされた。

 ところが、制度を運用する財団法人「日本医療機能評価機構」は20年12月に報告書を公表。個別審査の基準だった低酸素状態を示す数値について「分娩(ぶんべん)に関連して発症した脳性まひの有無を判断することはできない」と指摘。従来の基準で対象外となった子どもの99%は、制度の補償対象となる出産に伴って発症した脳性まひだと明らかにした。

一変した補償の「基準」

 これを受けて機構は個別審査の廃止を決定。28週以降の出生なら原則補償対象とし、新基準を今年1月以降に生まれた子どもから適用することにした。

 この結果、出生時期で補償の可否が分かれる事態となった。今年1月より前に生まれ、個別審査で対象外となった子どもは全国に550人近くいるとされる。

 今回の要請書を提出した団体「産科医療補償制度を考える親の会」は、医学的に合理性のない基準で補償が受けられなかったとして、制度の剰余金635億円の一部を救済費にあてる新たな仕組みを検討するよう、厚労省に求めている。自民党内でも補償から漏れた子の救済を求める声が広がっている。一方、機構側は「過去に対象外となった人を事後的に補償することは想定されていない」としている。(久永隆一)

  • commentatorHeader
    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2022年8月5日21時8分 投稿
    【視点】

    私もちょうどこの産科医補償制度が始まった時とそれ以降に出産していますが、出産はママも赤ちゃんも命がけ。他人事ではありません。 エビデンスのない制度運用で支援からこぼれ落ちた子どもたちやご家族が苦しんでいるなら、救済すべきです。

こぼれ落ちる子どもたち

こぼれ落ちる子どもたち

虐待、貧困、性被害……。大人がつくった支援制度からこぼれ落ち、困難に直面している子どもたちがいます。今の国会では、「こども家庭庁」の設置法案などの審議が始まり、子ども政策の転換点を迎えます。今後、子どもたちに救いの手が届くのでしょうか。リアルな声とともに伝えます。[記事一覧へ]