老いは隠さず笑いに変える 西川きよしと漫才、見えた桂文枝の覚悟
照井琢見
キャリアを重ね、老境に至るにつれ、芸事の世界では「円熟味を増した」と評される。老いに勝る技がある、見事だ、と。
でも、落語家・桂文枝(79)はひと味違う。老いを隠さず、笑いにする。7月16日、大阪市のなんばグランド花月(NGK)であった独演会を見て、そんな覚悟を感じた。
落語家生活55周年を記念した会。西川きよし(76)とコンビを組んで、一夜だけの漫才を見せたはいいが、話は行ったり来たり。スムーズなかけ合いとは言いがたく、オチへの道筋も見えてこない。
文枝「そんな話をするって、聞いてまへんで」
きよし「台本持ってこよか?」
本当に忘れたのか、とぼけているのか。客席はハラハラする。これを笑いに変えるのが、ベテランの妙。きよしのナイスアシストで、NGKは安堵(あんど)含みの笑い声に包まれた。
どつかれ、よろめき……
この日は文枝の79歳の誕生日。それなのに、ステージ上でどつき回され、息はあがり、声はかすれて、よろめいて。体力の消耗はあきらかだった。
「疲れました……」
最後の創作落語「親父(おや…
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