子どものゲーム漬けをやめるには リアルな世界で「いいね!」を体験

中島美鈴
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 子どもが一日中ゲームやスマホばかりして、悩んでいるご家庭も多いでしょう。その対処法を、コラムで解説しています。

 前回はゲームやスマホをやめられない四つの理由に注目して、親子で対話する方法をお伝えしました。今回は、その理由別の対処法をご紹介します。

 前回ご紹介した、ゲームやスマホをやめられない四つの理由はこうでした。

 1: 達成感がすごい!

 2: 続きが気になる

 3: 誰かと一緒にでる/注目される

 4: ひまつぶし(現実逃避)

 理由別に、対処法を考えます。

「達成感」はご褒美システムで

 ゲームは人が達成感を得て、もっと続けてプレーしたくなるような仕組みが非常に巧妙に仕込まれています。ほんとに脱帽です。

 ゲーム依存にならない対処の方針は「ゲームの人を魅了してしまう仕組みを、現実生活にも取り入れる」です。

 具体的には、

「努力に見合う報酬が即座に得られるように、課題を小分けし、ご褒美を配置する」

 ことが大切です。

 野球の練習をそこ10分がんばったからといって、すぐにレギュラーになれるわけではないけれど、素振り50回できた日にはカレンダーにシールが貼れる。それが10枚たまったら、野球観戦に行ける!などのご褒美システムを親子で設定してもいいでしょう。

 英語の勉強を数年がんばったとしても、ペラペラになれる人はなかなかいませんが、毎日25分間オンライン英会話をすれば、累積勉強時間が表示されるとか、ポイントがたまってランキングが表示されるとか。そういうシステムを利用するのです。

 ここで大事なのは、「野球の練習」という漠然とした大きな課題が、「素振り50回」という小さな課題に小分けされていることです。「英語の勉強」でも同様に「25分間のオンライン英会話」になっていますね。具体的で、カウントできるものにすることで終わりが見えて、頑張りやすくなります。

 そして即座に報酬です。シールを貼るだけ、ポイントがたまるだけといえばそうなのですが、実際にやってみると意外なほど達成感があります。

 もちろんその程度ではやる気のわかない子どももいますから、「シールがたまったら野球観戦」などともっと実際的なご褒美もセットにするわけです。

 SNSにハマっている子どもには、現実場面でも、「いいね!」と人に思われて、感謝される体験を計画しましょう。いくらSNSが発達しても、やはり実際に「ありがとう」と笑顔でいわれる体験は力強いインパクトがあります。

「続きが気になる」子は図書館へ行こう

 動画配信サービスの無限に続く連続ドラマや、動画などのストーリー性のあるものにハマっている場合には、現実生活でその子ども自身が主役になるようなストーリーを尋ねてみましょう。

 私たちは、どんなに素敵な映画をみても、自分の人生の舞台に立って主役になれなければ幸せにはなれません。どんな人生を歩みたいのか、たまには長期的な視点で語り合うのもいいでしょう。

 小さい頃から暇さえあえれば動画をみていた子どもの多くは、「自分は何がしたいんだ」「どんな人生を送りたいんだ」などと思いを巡らせる余白がなかったことでしょう。

 かといってあまりに漠然としたこの問いは、すぐに答えが出ません。

 私のおすすめは、親子で図書館に行くことです。図書館には、ネットと違って、自分の興味とは関係なくあらゆる種類の本が並びます。その分、日頃接することのない情報があるため、世界が広がるのです。

 子どもがどのコーナーで足を止めるかしっかり観察しましょう。「このコーナーに行って欲しい」と親の意向を押し付けるのではなく、子どもが自然と惹かれるものが大事です。

「注目されたい」なら現実世界で

 ゲームで友達と待ち合わせている、もしくは、ゲームの世界ではカリスマであるといった場合、ゲームからますます離れ難くなります。

 この場合、リアルな世界で、人と交流する楽しさを実感させるのが一番です。しかし、なんらかの理由でこれができないからこそ、ゲームの世界が居心地よくなるのです。

 たとえば、「もともと人付き合いがうまくなくて、友達と話す時に、自分の話ばかりしてしまう」という子どもがいたとしましょう。この子どもが学校の同級生と話すと、「あの子、自分の話ばっかり」と疎まれてしまって、なかなかうまくいかないかもしれません。でも、ゲームの中で知り合った年上の人からすれば、「人懐っこくてかわいいな」と映るかもしれません。そうしてどんどん同級生とではなく、会ったこともないゲームの世界の大人としかコミュニケーションがとれなくなっていくかもしれません。

 まあ、それはそれでありじゃないかという考えもあるかもしれませんが、この子どもが学校生活という長時間過ごす場所で社会的な欲求が満たされないのはちょっと残念ともいえます。

 「自分のことを1話したら、相手のことを1聞く」とか「相手が話したくなるような質問の仕方」などを練習すれば、リアルの同級生と仲良くできるかもしれません。

「ひまつぶし」の裏側に目を向ける

 ゲームをひまつぶしてやっているといいながら、実はとても一人では抱えきれないほどのつらいこと、悲しいことが起こっているという子どももいます。

 人生経験も少なく、対処力が未熟な子どもにとって、その問題は大人が考えるより、うんと高い壁のように見えているものです。初めての試験、クラス替えもそうですし、友達とのけんか、部活で注意されたなども子どもにとっては衝撃的だったりします。「大丈夫、一緒にいて、一緒にどうにか解決できないか考えるから」と直面する手伝いをしてあげましょう。ひとりきりで立ち向かうより、うんと心強いはずです。「ママもそうだったなあ」なんて体験談も交ぜながら話せるといいですね。

それでもだめなら…

 ここまで、やめられない理由別に対処を講じてきましたが、やはりそれでもゲームもスマホもなかなかの強敵です。物理的に「みえなくする」「触れられなくする」などの対策も合わせて使っていきましょう。

 これらの理由を子どもと共に話し合ったあとに「じゃあ、あなたが欲しかったのはリアルな友達との交流だったのね。ゲームを深夜まですると次の日辛いから、夜10時以降はこのタイムロックコンテナにいれようか」と親子で決めていくとやりやすいですよ。一方的にスマホを取り上げるよりはうまくいきます。

*タイムロックコンテナ:自分で設定した時刻までスマホなどを操作できないように入れておく容器のこと。

    ◇

 もっと子どもの時間管理について知りたい方は「マンガでわかる 精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください」(主婦の友社)も参考になさってください。https://www.amazon.co.jp/dp/4074507668/別ウインドウで開きます(中島美鈴)

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    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2022年8月13日10時48分 投稿
    【視点】

    子育て講演会で「子どもの興味関心を大切に見守れとおっしゃいますが、スマホやゲームをずっとやっていても、見守っているのがいいのでしょうか」と質問されたことがあります。とてもいい質問ですよね。私はこう答えました。 「スマホやゲームがその子にと

中島美鈴
中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。