昔ながらの銭湯、今では22時間営業中 個室で本7千冊も読めます

大滝哲彰
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 7千冊をそろえた巨大本棚に22時間営業――。大阪市住吉区にある昔ながらの銭湯がこの夏、従来の銭湯の概念を覆すような空間に生まれ変わった。利用が減って姿を消しつつある地域の銭湯を救おうと動いたのは、各地で銭湯の「引き継ぎ」を手がける会社だった。

 JR長居駅から徒歩10分ほどの住宅街にある「辰巳温泉」。戦前に多くの長屋が並んでいた時代から、地域の「風呂場」として地元民に愛されてきた。

 しかし、銭湯を使う人は年々減少している。かつて店主だった江村保雄さん(59)は「今の形では限界がある」と感じていた。

 そこで江村さんは、各地で廃業した銭湯などを再生する会社「ニコニコ温泉」の存在をネットで知り、相談した。店内をリニューアルし、経営も引き継いでもらうことにした。

 同社は東京都神戸市で、古くなった銭湯の経営を引き継いできた。

 「誰もがふらっと立ち寄れる公園のような場所」を目指し、すぐに辰巳温泉の改装工事に取りかかった。

 リニューアルの目玉は、番台前に設置した巨大な本棚だ。中央に利用者が座れるスペースがある独特な形状で、片側は階段状に、もう片方は小さな滑り台になっている。

 本棚には、漫画や絵本を中心に約7千冊の本を置いた。ネットカフェのような個室の空間も4部屋用意し、WiFiを整えた。

 また、月額料金を払って本棚を借りた人が自宅から持ち込んだ本を並べて売れる「古本屋」ができる「フロナカ書店街」もある。

 風呂場とサウナはほとんど手を加えず、古い風情をそのまま生かして残した。

 「仕事で帰りが遅くなった人も、早起きな高齢者も、誰でもいつでも利用できるように」と、営業時間は午後2時から翌日正午までの22時間に設定した。

 広報・デザインを担当する田川あす美さん(33)は「地域密着の形が銭湯の良さ。昔ながらの良さは残しながら新しい銭湯のスタイルをつくり、『とりあえず辰巳温泉にいこう』と思ってもらえるような空間にしたい」と話した。

 銭湯の経営を託した江村さんは、「昭和の雰囲気をかもしながら、時代に合わせて長く続く銭湯になればうれしい」と期待する。

 7月中旬にオープンした。入浴料は高校生以上490円、中学生350円、小学生200円、幼稚園以下100円。サウナの利用は別途100円かかる。(大滝哲彰)