「危機一髪」「避難する暇もなかった」 豪雨で孤立した集落で何が

柳川迅、小田健司、堀川敬部
[PR]

 浸水被害が多発した福井県南越前町今庄地区で一時孤立した集落・新道でも6日、住民が片付けに追われた。上下水道が使えなくなり、水路の水をくんで掃除に使う住民の姿も目立った。

 集落を通る県道は、所々で崩壊し、手前2キロほどから車両が通行止めに。町の中心部に近い下新道に入ると、県道が泥で覆われ、流木が散乱していた。山側からは数百メートルにわたって土砂が流れ出ている。

 土砂を片付けていた吉羽壮太郎さん(77)は5日朝、病院に行くため車で家を出た。その後に車庫の前の県道に土砂が流れ込んだという。「危機一髪だった。5年ほど前にも土砂の流出があったが、もっと小さかった」。引き返したが、県道も通行止めとなったため、JR今庄駅に駐車し、歩いて午後6時半ごろに帰宅したという。「道路が通じないと救急車も入れん」と話していた。

 下新道では集落のそばを流れる川の堤防が複数箇所で決壊した。低い場所にあった住宅では外壁に路面から2メートル近いところまで水位が上がった跡がついていた。自宅が床上浸水した山内豊和さん(81)は危険を感じて、家よりも高さがある県道に行き様子を見ていたところ、10~15分ほどで水位が急上昇し、家に戻れなくなった。「車5台が水につかってダメになった。避難させる暇もなかった」と話した。

 さらに奥の上新道では、区長の田中利治さん(65)がパンやカップ麺、飲料水といった役場からの救援物資を配っていた。居住する22世帯の半数が床上浸水の被害に遭ったという。「電気は通じていて冷房も使えて助かるが、水が出ないと掃除にも困る。道路さえ通じれば風呂に入りにいけるのだが」と話した。

 自宅前の泥を掃除していた池端清美さん(60)の家は床下浸水にとどまった。90歳近い義理の両親と同居しており、義理の母は車イスを使っているという。「避難する暇もないほど早い増水だった。水が家の中に入ってきたら高齢の両親をどうしようかと祈る気持ちだった」と振り返った。

 県によると、南越前町では床上浸水が147棟、床下浸水は約150棟が確認されている。杉本達治知事はこの日、ヘリコプターで南越前町の現場を視察した。(柳川迅、小田健司、堀川敬部)