9日、長崎は被爆77年の「原爆の日」を迎えました。ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用をちらつかせるなかで営まれた平和祈念式典や関連の催しなど、長崎の祈りの日を追いました。
【3D特集】ナガサキノート あの日、人々の足取り
朝日新聞長崎版の連載「ナガサキノート」。被爆者約150人の証言と足取りを3Dの地図上にアニメーションで再現しました
■■■8月8日■■■
08:30
77年前の苦しみに水を…採水始まる
9日の長崎原爆の日に開かれる平和祈念式典では、水を求めながら亡くなった被爆者を慰霊するため、祭壇に水を捧げる「献水」がある。前日の8日、長崎市の平和公園にある「平和の泉」など県内5カ所で、献水に使う水をくむ行事があった。
平和の泉には、いずれも市立の坂本小学校6年の森天摩(てんま)さん(12)、山里中学校3年の登立愛来(のぼりたてあいき)さん(14)、長崎商業高校2年の森岡凜(りん)さん(16)が参加。3人は追悼の思いを胸に、ひしゃくで水をくみ取った。森岡さんは「被爆者たちも高齢化している。若い自分たちで平和の思いを未来につなげたい」と前を見据えた。
09:30
「長崎から平和の思い届ける」リハーサル始まる
9日の平和祈念式典を前に、長崎市松山町の平和公園で式典リハーサルが始まった。遺族代表や被爆者代表らが参加。式典の全体の流れや立ち位置を確認した。
会場には大小のテントを設置。熱中症を防ぐため、霧状の水を噴出するミストシャワーも設けた。田上富久市長はリハーサル前、参加者らに「ロシアによるウクライナ侵攻のさなかで行われるとても大事なタイミングでの式典。みなさんと一緒に長崎から世界に平和の思いを届けていきたい」と呼びかけた。
10:10
爆心地公園訪れた親子「まだわからなくても…」
長崎市松山町の爆心地公園に、長崎県長与町の山道一平さん(43)が訪れた。「『戦争が怖い』だけではなく、平和って何だろうって考えるきっかけになれば」と、初めて小学6年の娘ら3人を連れ、浦上天主堂遺壁などを見て回った。
山道さんは長崎育ち。大人になって県外の人と接すると、8月9日という日付があまり意識されていないことに気づいた。娘たちには、長崎で生まれ育ったからには、この日が近づくにつれて平和や戦争について考えてほしいと思っている。
9日は娘たちの学校があるため、前日に訪れたという。山道さんは「小さい子どもたちはまだわからないだろうけど、気づける年齢になったら気づいてほしい」と話す。
11:10
韓国人犠牲者を慰霊
長崎原爆資料館近くの韓国人原爆犠牲者慰霊碑の前で、原爆で犠牲になった韓国人を悼み、慰霊祭が営まれた。駐福岡韓国副総領事ら約60人が参加。献花の後、原爆が投下された午前11時2分に合わせて1分間、黙禱(もくとう)した。
碑は昨年、在日大韓民国民団などでつくる建立委員会によって長崎原爆資料館前に建てられた。当時、長崎県内に約7万人の朝鮮半島出身者が住み、数千~1万人が原爆の犠牲になったと記されている。
南宮煥(ナムグンファン)副総領事は「76年の間、慰霊の碑が無く申し訳なかったが、建てられて幸いと思っている。慰霊祭が行われることは子孫として大事なことだと思っています」と話した。
11:30
大阪の大学生「平和って何なのか考えたい」
長崎市の原爆資料館を訪れた大阪府の大学3年生、中島秀太さん(21)は「世界で戦争が起きているなかで、平和って何なのか考えたいと思って」。広島には足を運んだことがあるが、長崎に来るのは初めてという。
資料館では、市民団体の朗読会に飛び込みで参加。約10人の前で紙芝居を読んだ。「多くの人が来ていることを目の当たりにして、みんな平和を願っているんだなと改めて感じた」と話した。
16:00
全国の小中高生250人が平和学習
長崎市の平和会館と原爆資料館では、「青少年ピースフォーラム」が開かれ、全国の小中高生ら約250人が参加した。被爆体験者の話を聞いたり、戦時下の生活を疑似体験したりした。
愛知県から参加した中学3年の伊藤圭佑さんは「昔に起きた原爆投下や戦争だけど、現代の問題、自分事として考えることができた」と話していた。
16:10
イラク大使「長崎の人々、私たちと同じ」
たび重なる戦禍に見舞われてきたイラク。その代表として爆心地公園に献花に訪れたアブドゥル・カリーム・カアブ特命全権大使はイラク戦争に触れ「私たちと同じように、アメリカの攻撃で犠牲になった長崎の人々に祈りを捧げられて光栄だ」と話した。
また、「あらゆる国はともに並び立つことができるはず。核兵器は最も危険な必殺兵器で、人間性を踏みにじるだけでなく、地球の生命をあっという間に消してしまう。二度とそんな爆弾が投げられることがないよう、そして戦争のきっかけになるものを防ぐよう、人類が教訓とすることを願っている。私たちにはそれができると思う」と話した。
16:30
各国の駐日大使らが献花
長崎市の爆心地公園で、9日の平和祈念式に参列する各国の駐日大使らが、原爆落下中心碑の前に献花した。
パラオのピーター・アデルバイ駐日大使は献花後、「パラオは日本の統治下にあったこともあり、長崎の歴史に共感している。過去の歴史を二度と繰り返してはいけない」と話した。
また、核兵器禁止条約の交渉会議で議長国を務めたコスタリカ共和国のアレクサンダー・サラス・アラヤ駐日大使は、核兵器禁止条約について「日本だけでなく、全世界の国々が参加するのが、平和への唯一の道だ」と語った。
17:30
国連の中満事務次長が長崎市長と面談
9日の平和祈念式典に国連事務総長の代理として出席する中満泉・事務次長が、長崎市のホテルで田上富久市長と面談した。米ニューヨークで開催中の核不拡散条約(NPT)再検討会議について、どのような課題があり、どう進んでいくのか意見を交わしたという。
中満事務次長は面談後、NP…
- 【解説】
私の夫は被爆二世です。その定義は、両親又は両親のどちらかが被爆者(被爆者健康手帳を所持している人)で、原爆投下後に生まれた者。よって息子と娘は被爆三世になります。 77年前の今日、長崎市にある海星中学2年生だった義父は被爆しました。五島の