カメ吉はメスだった 震災生き抜いた心の支え

三浦英之
【動画】水族館「もぐらんぴあ」で人気のアオウミガメ「カメ吉」がでメスであることが判明=三浦英之撮影
[PR]

 夏を迎えた北三陸。岩手県久慈市の地下水族科学館「もぐらんぴあ」では、アオウミガメの「カメ吉」が人気だ。このアオウミガメ、実は数年前の調査でメスであることが判明している。それでも、同館スタッフは、カメの名前を変えようとはしない。

 同館は1994年、国家石油備蓄基地の作業坑を利用して造られた地下水族館。来館者が水槽の中のトンネルから魚たちを観察できる「トンネル水槽」に入ると、子どもたちから歓声が上がった。

 お目当ては、頭上の水槽を飛ぶように泳ぐカメ吉だ。両親と一緒に訪れた幼い女児は「カメさんは飛行機みたいに泳ぐんだね」と大はしゃぎだ。

 カメ吉は、三陸沖で網にかかったところを同館に引き渡された。名前の由来は不明。「飼育員が子どもに聞かれて『カメ吉』と答えたのが始まりではないか」との説が有力だ。

 東日本大震災の津波で奇跡的に生き残ったのもカメ吉だった。電源の喪失でポンプが動かせず、約200種約3千匹の魚が死滅するなか、肺呼吸ができるカメ吉は、真っ白く濁った水槽の中で生きていた。

 同館が再開するまでの約5年間、青森県八戸市で飼育され、2016年春に故郷に戻った。アオウミガメは成長するまで性別の判定が難しく、19年春、研究機関の血液検査でメスであることがわかった。

 宇部修館長(65)は「オスでもメスでも、カメ吉はカメ吉。あの震災を一緒に生き抜いた相棒であり、その呼び名も含めて、私たちの心のよりどころなのです」と話している。三浦英之