「官邸のせい」言説はなぜ 権力構造の「健診」が必要 憲法季評

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憲法季評」 松尾陽・名古屋大学教授(法哲学) 

 安倍晋三元首相が撃たれたその日、東京でウズベキスタン憲法改正案をめぐる国際シンポジウムに出席していた。私は、長期的で安定的な構造を提供する憲法の役割を強調する報告をした。

 その報告の直前に安倍元首相が撃たれたと、妻からのメッセージが携帯電話に届き、「日本じゃないみたいだ」という感想が思わずこぼれおちた。シンポジウムの終了後、名古屋に到着する前に訃報(ふほう)に接した。ただ、駅も電車内もいつもとかわらぬ状況であった。

 同様のことがウズベクで起きたらどうなるだろうかと新幹線の車内で考えを巡らせていた。数年前、ウズベクを訪れたとき、大統領の車列とすれ違った。大統領側の車線は通行止めになっており、中央分離帯の上に警察官が等間隔に立っている。警察官の向こう側を大統領の車列が猛スピードで駆け抜けていった。1991年にソビエト連邦から独立し、共和制国家となって30年ほど経つといえども、大統領の権限と権威は非常に強いようだった。

 さて、事件の前から安倍政権については、既に多くのことが語られている。日本の歴史上、最長期間を務めた総理大臣。集団的自衛権の問題をはじめとして憲法問題についても積極的に動いた。

 称賛であれ非難であれ、20…

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    千正康裕
    (株式会社千正組代表・元厚労省官僚)
    2022年8月11日18時45分 投稿
    【視点】

    安倍政権下で官僚として意思決定プロセスを見てきたが、権力集中の背景の説明などは、この記事の内容に賛同する。 かいつまんでいえば、小選挙区制と無党派層の増加が内閣支持率至上主義をもたらし、さらに大手メディアの衰退とSNSの発達によりこれ

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    佐藤武嗣
    (朝日新聞編集委員=外交、安全保障)
    2022年8月11日8時3分 投稿
    【視点】

     大変重要な指摘だと思う。日本での長年の政治取材の経験から、ワシントン特派員として米国政治に接して痛感したのが、大統領に強い権限を与えながらも、行政・立法・司法の「権力の分散」を制度的にも担保し、それに実効性を持たせることに腐心していること