沢の水を飲み、体重が減っても…災害調査30年の研究者の原動力は

有料記事

佐々木凌
[PR]

 30年以上にわたり、災害が起きると現場に駆けつける研究者がいる。災害の調査は体力勝負で、炎天下で20キロ近く歩いて体重が数キロ減ったことも。それでもなぜ、現場に急ぐのか。

 その研究者は、山口大の山本晴彦教授(64)。環境防災学が専門で、北は2006年の北海道佐呂間町竜巻から、南は03年の沖縄・宮古島の台風まで、80カ所ほどの風水害の現場で調査を続けてきた。

熱海の土石流発生、3日後に調査開始

 21年7月3日の静岡県熱海市の土石流では、直後の6日に現地を訪れた。

 土石流の現場では、巻き込まれた人の捜索や救助のために、土砂が取り除かれたり住宅が取り壊されたりすることもある。土石流の幅や勢いなどを正確に把握するには、できるだけ早く調査を始めた方がいい。

 発生のニュースを知り、すぐに現地調査の準備にとりかかった。

 ただ、特に発生から72時間は行方不明者の捜索が最優先。テレビやインターネットで情報を集めながら、雨量の推移、土地の特徴などを頭に入れ、どこを重点的に調査し、何を確かめるかを整理した。

茶色い土を見て抱いた疑問

 山口県を出発したのは発生から2日後の5日の夜。新幹線で深夜にJR熱海駅に到着し、翌6日の朝、レンタカーで伊豆山地区に向かった。

 逢初川の西側を歩いてまず感じたのが、被害の幅の狭さだった。

 高いところでは3階建てのビルの屋上にまで泥の痕跡があった。道路脇の標識はひしゃげ、屋根がつぶれた乗用車も。ただ、少し離れると被害の痕跡はなかった。土石流が流れたのは、幅80メートルほどで谷沿いに限られていた。

 勾配は11度ほどと急で、凹凸もほとんどない。急傾斜に加え、V字状の谷で土石流が横に広がらなかったと考えた。

災害調査は「力仕事」。山本さんは自分の足で歩くことにこだわります。原点には、31年前のある災害がありました。

 7日は、川の東側と谷の最上…

この記事は有料記事です。残り1291文字有料会員になると続きをお読みいただけます。