西谷監督のカミナリ、母からの手紙…大阪桐蔭・川原はエースになった

山口裕起
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(10日、第104回全国高校野球選手権大会1回戦 旭川大3-6大阪桐蔭

 大阪桐蔭の背番号1は、へこたれなかった。

 春夏連覇へ。初戦の先発を託された川原嗣貴(しき)は立ち上がりから球が上ずった。三回までに3点を失った。それでも、「冷静に」。自分に言い聞かせた。

 昨秋の明治神宮大会決勝。五回途中に3番手で登板したが、打者2人に計3球を投げただけで降板した。「もっと投げたかった」と、ベンチでふてくされていると西谷浩一監督(52)からカミナリを落とされた。「一人でやっているんじゃないだろ。何を考えてるんだ」

 今年1月、母綾子さんから1通の手紙が寮に届いた。神宮大会のこの場面に触れつつ、「困難は乗り越えられる人にしかこない。すべてを受け入れなさい」と書かれていた。

 はっとした。ふだんからピンチの場面や苦しい状況を想定して練習をするようになった。仲間のミスにも「気にするな」と声をかけるようにした。自然と制球力も高まり、投球の幅も広がった。信頼を取り戻し、春は10だった背番号はこの夏、1になった。

 この日、四回以降も走者を許しながらも最速146キロの直球を軸に粘った。8回3失点。果敢に挑んでくる旭川大を後押しするような球場の雰囲気にも負けず、逆転勝ちを呼び込んだ。西谷監督は言った。「うちの背番号1。苦しい展開で、よく踏ん張ってくれた」

 昨夏は2回戦で近江(滋賀)に敗れた。救援して勝ち越しを許し、涙にくれた。あれから1年。「責任と自覚を持ってマウンドに上がりました」。たくましくなって帰ってきた。(山口裕起)

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