学術会議の任命問題「改めて候補者選考を」 官房長官が梶田会長に

藤波優
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 日本学術会議の会員候補6人が任命を拒否された問題で、政府側が学術会議に、改めて候補者選考をするよう提案していたことがわかった。学術会議の梶田隆章会長が10日開かれた臨時総会で報告した。解決に向けた具体的な提案だが、会員からは反対の声があがり、結論は出なかった。

 問題の発端は、2020年10月、学術会議が推薦した会員候補105人のうち、人文・社会科学分野の6人を当時の菅義偉首相が任命しなかったことだ。菅氏は拒んだ理由の明確な説明をしないまま、21年10月に退陣した。引き継いだ岸田文雄首相は「一連の手続きは終了した」との立場を変えていないが、松野博一官房長官を対話の窓口にした。

 松野氏と梶田氏は今年、3月16日と8月3日に2度にわたり面談。学術会議側の説明によると、梶田氏は、適正な手続きのもとに選考された6人を候補者から外すことはできないとし、6人の名簿を再提出する考えを伝えた。だが、松野氏は「『一連の手続きは終了した』との政府の考え方と相いれない」などと応じず、「未来志向の観点から、新たな選考プロセスの考え方を踏まえて、改めて候補者選考を行うことを検討いただきたい。次期の候補者選考を進める中で解決を考えるのも一案。『一連の手続きは終了』という政府の立場も考慮した上で、改めて解決の道を考えていただけないか」と求めたという。

 ただ、学術会議が改めて選考した上で、拒否された6人を再び推薦しても、任命されるか、確約されたわけではない。

 この日の総会で、会員たちからは「候補者は正当に選んでおり、選考のやり直しはありえない。やり直しをすれば、会員選考に問題があったと認めることになる」「政府が学術会議をコントロールできるということを認めることにもつながってしまう」「容認できない姿勢を示すべきだ」などとして、選考のやり直しではなく、粘り強く任命を求めていくべきだとの意見が多く出た。

 梶田氏は総会後の記者会見で「選考のやり直しは極めてハードルが高い」と述べ、「今回の意見をベースに、今後執行部としてどうするか考えていく」と説明した。

 学術会議は今年4月の総会で、大学・研究機関だけではなく、産業界や法曹界、教育界などの実務現場の研究者らも推薦することや、任命後に業績内容や選考理由を公表し、選考プロセスの透明化を図ることを盛り込んだ会員の新たな選考方針を決めている。藤波優

日本学術会議の任命拒否問題をめぐる経緯

2020年

10月1日 菅義偉首相が会員候補6人の任命を拒否していたことが発覚

  2日 学術会議が、任命しない理由の説明と6人の任命を求める要望書を決定し、菅首相に提出

  16日 菅首相と学術会議の梶田隆章会長が初面談

2021年

1月28日 学術会議が任命問題の解決を求める幹事会声明を決定

4月22日 学術会議が6人の即時任命を求める声明を総会で決定

10月4日 菅首相が退陣し、岸田文雄内閣が発足

2022年

1月13日 岸田首相が梶田会長と初面談、対話の窓口に松野博一官房長官を指名

3月16日 松野官房長官と梶田会長が初面談

8月3日 松野官房長官と梶田会長が2回目の面談

  10日 日本学術会議が臨時総会を開く

(*肩書は当時)