旧統一教会系団体、宮城の活動実態は? 専門家に聞く

聞き手・根津弥
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 安倍晋三元首相への銃撃事件をきっかけに「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)への関心が高まっている。霊感商法や悪質な勧誘などが問題視された宗教団体で、逮捕された男は恨みを抱いていたという。東北での活動実態は今、どうなっているのか。カルトの勧誘に詳しい東北学院大の川島堅二教授(宗教学)に聞いた。

 ――旧統一教会系の活動は?

 7月に東北学院大の男子学生から相談を受けたばかり。旧統一教会系とされる東北大の学生団体「CARP」(原理研究会)に関わる先輩から勧誘されたとの内容だった。

 当初は彼の中で旧統一教会と結びついておらず、SDGs(持続可能な開発目標)に関する議論やあいさつ運動を行うサークルだと認識していたようだ。いまどきだなと思うが、SNSを通じてつながったと。

 ――その学生も活動はした?

 そう。ただ、しばらくして勉強会で「統一原理」(旧統一教会の教義)という言葉を聞き不審に思い、距離を置いたようだ。今回の事件があって、情報提供を兼ねての相談だった。

 ――はじめは宗教色が薄い?

 表向きはスポーツや文化系のサークルとして活動する。

 「摂理」という別の団体の例だと、バレーボールサークルだと思わせ、心を許したころに「海外の偉い先生の教えを学んでいる」などと集まりに誘う。以前は西公園(仙台市青葉区)で朝にサッカーをしているサークルもあった。1~3カ月で正体を明かすこともあるし、1年かけることもある。受験参考書コーナーで高校生に声をかける例もある。

 ――どういう大学が狙われるのか?

 一般的に偏差値の高い大学を狙う。宮城なら東北大。そこの学生が信用となり、インカレとして他大学の学生も誘う。

 他県では、摂理系でしたが山形大の卒業生の親から相談を受けた。東北の全ては把握していないが、地域の国立大が活動拠点になることが多い。

 ――見分けるポイントは?

 一つ目はメンバーがはっきりしているかどうか。カルトサークルは上部の宗教団体から人が送られ、毎回来る人が違うことがある。健全なサークルならこの大学から何人、ここから何人とはっきりしているはずだ。

 二つ目は会計報告。カルトは上の援助があり、ちゃんとした会計報告ができない場合が多い。

 ――保護者が気づくには?

 泊まりがけや関わる時間がだんだん増える。週1回だったのが、2回、3回と。高校3年生が合宿に参加したいと親に言い出した事例では、費用がタダだった。子どもは「タダだからいいでしょ」と言うけど、1泊食事付きでタダなんていうのは注意が必要だ。

 ――カルトとは?

 マイノリティーで熱狂的な崇拝行為は、大部分が信教の自由で認められている。ただ、これに加えて、違法行為に組織的に関わる団体がカルトだと考えている。信者になると加害者になる恐れがある。旧統一教会もそうだし、オウム真理教は最たるものだ。

 旧統一教会を巡る裁判では、霊感商法や正体を隠した勧誘が違法とされた。十分な情報提供をせず、信者になる前に誘導してしまう行為も、信教の自由における「自己決定権」を侵害しており、違法と言える。

 ――抜け出すのは難しいのか?

 20年近く脱会に関わって、3カ月以内ならほぼ成功してきた。だが、1年を過ぎると、なかなか聞く耳を持たない。親への助言としては、絶対に頭ごなしに責めず、関わり続けることが大事だ。

 また、勧誘形態は変わっている。2006年ごろから摂理の勧誘が社会問題化し、大学が対策に取り組んだことで、キャンパス内での勧誘が非常に難しくなった。それで、対象が高校生まで広がった面もある。さらにコロナ禍でサークル活動が難しくなり、インターネット、SNSでの活動も活発になっている。

 ――カルトを取り巻く状況は変わったのか?

 オウム真理教の麻原彰晃(本名・松本智津夫)・元死刑囚ら13人の死刑執行が2018年にあり、カルト問題が片付いたという空気が広がった。オウム事件は終わったと。だが、後継・派生団体(アレフ、ひかりの輪など)は変わらず続いているし、旧統一教会も摂理も全国で活動を続けている。

 ――銃撃事件の容疑者と家族についての印象は?

 報道の範囲では、夫に先立たれた容疑者の母は、カルトにはまる典型的なパターンだと思う。宗教に心が動かされる人の多くは何か悩みがある。子育てかもしれないし、仕事のことかもしれない。たまたま相談先がカルトだった。

 旧統一教会は家系図を書かせて、「不幸な亡くなり方をした方はいますか」と聞く。「この方がいま霊界で苦しんでいる」「今あなたが解決すれば、子孫が全然違ってくる」と言って、物を買わせたり、献金させたりするわけだ。

 ――政治家と宗教の関わりも注目されている。

 宗教団体が政治活動に合法的に関与する方法はいろいろある。しかし、政治家、とりわけ国政を担う議員が特定の宗教団体と関わりを持つことは「政教分離」の原則から厳に慎むべきと考える。(聞き手・根津弥)

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 1958年生まれ。恵泉女学園大学の前学長で、2018年から東北学院大教授。長年、学生のカルト対策や脱会活動に取り組む。09年には「全国カルト対策大学ネットワーク」を立ち上げ、全国の大学教職員で情報交換を続けてきた。現在は日本脱カルト協会顧問。