甲子園の歓声…届いた相棒の一声 仙台育英バッテリーの終わらない夢
11日、全国高校野球選手権大会2回戦、鳥取商0―10仙台育英
初回の立ち上がり、仙台育英の高橋煌稀(こうき)投手(2年)の得意の速球は、思ったより低めに入ってしまった。見逃し三振を奪った後の次打者に、いきなりの四球。宮城大会の4試合では一度も出しておらず、制球力に自信があっただけに、一瞬、動揺した。
「落ち着いていけよ!」
ミットを構える尾形樹人君(2年)が返球しながら叫んだ。すり鉢状の観客席から応援が飛び交うなかでも、聞き慣れた声は届いた。自然と焦りが消えた。
2人は宮城県登米市迫町佐沼出身の幼なじみ。父親同士も仲が良く、野球チームを作ろうと、高橋君と尾形君が友達に声をかけて小学3年の頃に立ち上げた。経験者はほとんどおらず、要となる投手と捕手は2人で交互に務めた。
小5の時に初めて出た大会では30点差で大敗という苦い経験もある。翌年には市の大会で優勝。中学でも2人で投手と捕手を交代しながら継投してきた。
尾形君の父親が仙台育英で甲子園に出たこともあり、2人も進学を決めた。「甲子園でバッテリーを組もう」。そう約束を交わした。
2年生ながら背番号11を任された高橋君の配球は、いつも尾形君がリードする。この日も序盤は最速145キロの直球で押し、次第に変化球を増やしていった。誰よりも信用できる尾形君のミットめがけて、投げ込んだ。5回を投げて被安打1。味方の好守備にも助けられ、失点ゼロ。最高の形でエース古川翼君(3年)にマウンドを託した。
試合後、高橋君は「すばらしいところで(尾形君と)2人で野球をやれてうれしい」と笑顔。尾形君も「前日の夜から楽しみにしていた。冷静にプレーできたし、中学からの目標が達成できた」。夢はまだ終わらない。(武井風花)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら