野生を知らないライチョウのヒナたち、初散歩 晴天の山を跳びはねる

菅沼遼
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 中央アルプス長野県)の木曽駒ケ岳(標高2956メートル)で11日、前日に動物園からヘリコプターで移送された国の特別天然記念物・ライチョウが保護ケージの外に出された。周囲を警戒するように見回す母鳥の周りを、ヒナが跳びはねるように動き回っていた。

 この日は「山の日」。山頂付近は好天に恵まれた。母鳥とヒナ7羽の親子が登山道近くまでやってくると、多くの登山客が一斉にカメラを向けていた。

 環境省は中央アルプスでライチョウの「復活作戦」を進めている。日本のライチョウは本州中部の高山帯のみ生息し、環境省のレッドリストでは、近い将来絶滅の可能性が高い「絶滅危惧ⅠB類」に分類されている。1980年代の調査では約3千羽がいたと推測されているが、現在は約1700羽まで減少。大半が北アルプス南アルプスに生息し、中央アルプスでは半世紀前に絶滅したとされていた。

10月上旬まで生き残れるかが成功の鍵

 だが、2018年に木曽駒ケ岳で、乗鞍岳(標高3026メートル)を含む北アルプス方面から飛来したとみられる1羽のメスを確認。20年8月に乗鞍岳から19羽を木曽駒ケ岳に移送し、自然繁殖にも成功。そこから昨夏、11羽を那須どうぶつ王国(栃木県那須町)と茶臼山動物園長野市)に移して繁殖させ、ヒナを育てていた。

 復活作戦の最終段階として、那須どうぶつ王国のヒナ16羽を含む計22羽を10日にヘリコプターで木曽駒ケ岳山頂付近に運び、保護ケージの中で過ごさせていた。

 この日の「散歩」は現地の環境に順応させるのが目的で約1週間繰り返し、慣れた親子から放鳥される。動物園生まれのライチョウを野生の帰すのは初の試みで、ヒナが山肌に出るのも初めて。ヒナが親離れする10月上旬ごろまで生き残れば、作戦は成功に向け大きく前進する。(菅沼遼)