「一生に一度」漁港に謎のクラゲ 水族館職員が語る新種発見のロマン

久保田一道
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 茨城県大洗町の大洗漁港でも採集されたことがある「謎のクラゲ」が、新種とわかった。アクアワールド県大洗水族館の職員も加わった研究で明らかになり、「オトヒメクラゲ」と命名された。水槽の中で触手を広げて泳ぐ姿が、同水族館で見られる。

 オトヒメクラゲは傘の部分が直径1センチほど。8本の触手には毒針の役目をする刺胞の塊が多数並ぶ。沿岸に生息する「ウラシマクラゲ」に似ているが、こちらの触手は4本。オトヒメクラゲにはその2倍ある。

 同水族館で魚類の展示を担当する斎藤伸輔さんは、2005年以降、大洗漁港の採集調査で、何度かこのクラゲを確認していた。図鑑を開いても同じ生物は見当たらなかった。だが、クラゲには奇形が珍しくないため、当初は「ウラシマクラゲの奇形かもしれない」と考えていた。

 15年、専門家が集まる研究発表の場で、このクラゲの姿がスクリーンに映し出され、斎藤さんは驚いた。取り上げたのは、当時大学生で現在は新江ノ島水族館神奈川県藤沢市)に勤務する山本岳さん。このクラゲの正体について情報を求める内容だった。

 これをきっかけに、研究者の間で「正体不明のクラゲ」として注目を集めるようになった。斎藤さんと山本さんは情報交換をするようになり、その後、クラゲの分類を研究する黒潮生物研究所(高知県大月町)の戸篠(としの)祥さんを加えて、研究を進めた。

 標本にしたクラゲの特徴やDNAの分析を経て、新種であることを突き止め、今年6月に研究成果がスイスの学術雑誌に掲載された。特徴が似たウラシマクラゲよりも小さいことから、浦島太郎のおとぎ話に登場する乙姫にちなんで、オトヒメクラゲと名付けた。

 斎藤さんは新種の発見に携わった経験を、「一生に一度あるかないか」と表現し、「新種というと縁遠いイメージがあるかもしれないが、身近な場所にも生息しているところにロマンがある」と語る。(久保田一道)