海藻の林消える磯焼け広がる 海水温の上昇影響か 志摩
三重県志摩市の沿岸で、海藻が消えた「磯焼け」が急速に進んでいる様子を地元のダイバーがカメラに収めた。長年続く「黒潮大蛇行」の影響とみられている。「磯焼けは深刻で、広がり続けている現状を知ってほしい」と話している。
撮影したのは、志摩市阿児町国府のプロダイバー、清水憲夫さん(69)。潜水歴42年で、ダイビング客を案内して沿岸の各地点に潜っている。
太平洋に面した志摩市沿岸では、3、4年前から「磯焼け」が急速に拡大。これに伴い、アワビなどが不漁となっている。
清水さんは、阿児の松原海水浴場の南、阿児町甲賀の沖2キロ、水深16メートルの海底で定点撮影した。昨年8月には、長さ1メートルはある大型海藻のカジメ類が海中林のように茂っている状態をとらえた。ただ枯れ始めていた株も見られ、11月と12月には大半が茎だけとなった。今年2月には岩場に何も生えていない「磯焼け」になった。
10年前、同じ阿児町甲賀の300メートル沖の水深7メートルで撮った際には海藻が一面に繁茂していた。住み家としているアワビやサザエも多数見られたという。それだけに、「ついに(磯焼けが)ここまで来たかという思いになった」と振り返る。
清水さんが原因と考えるのが黒潮大蛇行による高水温。気象庁によると、例年、日本の太平洋側を東向きに流れる暖流、黒潮が今は、和歌山県の潮岬付近で南へ向かい、Uの字を描いて本州へ近づく形となっている。2017年8月に始まり、今年4月以降、過去最長を更新し続けている。
水産関係者らによると、大蛇行で、黒潮とその支流が志摩半島周辺へ流れ込んでくることで一帯の海水温は例年以上に上昇。温暖化もあって、比較的冷水を好むカジメ類といった海藻がダメージを受けていると考えられている。清水さんは「海藻が再び生えるよう人の手で根付かせる取り組みを積極的にしていかないといけない」と話している。
黒潮大蛇行をめぐっては、三重大大学院水産実験所の松田浩一教授が、海水温の上昇でガンガゼといった食害生物が増殖し、海藻を食い荒らし、磯焼けを引き起こしていると指摘をしている。
不漁が続く志摩市では21年、水揚げ量はアワビが6トン、伊勢エビが71トンと数年前に比べ軒並み激減した。市は漁業者に委託して食害生物の駆除作業に力を入れている。(臼井昭仁)
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