中国軍演習、なぜ見かけ倒しだった 元空将補が懸念する3つの脅威
ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発し、中国軍が4日から台湾周辺の6カ所で軍事演習を始め、連日続きました。台湾の封鎖を目的にした演習の実態はどうだったのでしょうか。日本台湾交流協会台北事務所(大使館に相当)主任を務めた尾形誠元空将補は、中国軍が今回誇示した「三つの脅威」に注目します。
中国軍演習、「三つの目的」
――今回の演習の総合的な評価を聞かせてください。
今回の演習の目的は三つあったと考えられます。第一に台湾に対する懲罰、第二に対米警告、第三に国内対応です。
中国は「台湾封鎖」を強調し、海空戦力を動員し台北上空を通過する弾道ミサイルを発射しました。演習で使われた弾道ミサイルDF15は最大射程約900キロで、主に台湾攻撃に使われるものです。一部は日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾し、日本を牽制(けんせい)するとともに、日本の反応を探る姿勢を示しました。
逆に、米国に対するA2・AD(接近阻止、領域拒否)戦略に使うDF21D、DF26や、新型の極超音速ミサイルDF17は使いませんでした。米国に対しては、予想よりは抑制的な対応だったと言えます。
そして、中国は国内向けに対地攻撃の動画を流すなど、演習の様子を積極的に伝えていました。習近平中国国家主席はバイデン米大統領との電話会談で、ペロシ米下院議長の台湾訪問を中止するよう求めましたが、結果的にメンツを潰された格好になりました。国内で傷ついた威信の回復に成功しました。中国は、自ら設定した自己満足的な演習目的を達成したと考えています。
なぜ、「見かけ倒しの演習」になったのか
――尾形さんはミサイル演習の後、航空優勢や海上優勢を取る演習を行い、最後に上陸演習を行うと予想していました。
中国軍は実際に演習を行いま…
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