「センター返しが名電野球」 美濃十飛のサヨナラ打、体は覚えていた

山口裕起
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(12日、全国高校野球選手権大会2回戦 八戸学院光星5-6愛工大名電)

 頭は真っ白になっても、体は覚えていた。

 延長十回無死二、三塁。一打サヨナラの局面で、愛工大名電の7番美濃十飛(しゅうと)に打席が回ってきた。

 フルカウントからの7球目だった。「球種やコースはまったく覚えていない。ただ、センターへ。それだけでした」。打球が投手の足元を抜けていく。拳を突き上げながら一塁へ向かった。

 センター返し。それは、チームが1年間徹底してきたことだ。球を手元まで引きつけて、コンパクトに振り抜く。ふだんの打撃練習では速球でも変化球でも、大振りせずに、そのまま正面に打ち返してきた。

 倉野光生監督は言う。「センター返しが名電の野球。二遊間は広く空いているので、安打にもなりやすい」

 劣勢の展開でも、貫いた。

 4点を追う七回。死球を足がかりに無死一塁とすると、5番有馬伽久(がく)の右前安打から犠打を挟んで5連続長短打。ボール球を見極め、直球でも変化球でも引きつけて、振り切る。この回だけで追いついた。

 相手は左右タイプの違う投手が5人登板したが、それも苦にしなかった。

 美濃は言う。「どんな投手でもセンター返しをすればいい。みんなで次の打者につなぐ意識です」

 星稜(石川)との1回戦は14得点で大勝したが、放った長打は1本だけだった。この日も、計13安打。つないで、4点差をひっくり返してみせた。

 チームは2年連続14回目の夏の甲子園。春の選抜は2004年に準優勝、05年に優勝したが、夏に弱かった。

 夏2勝は前身の名古屋電気で工藤公康(ソフトバンク前監督)を擁して4強入りした1981年の第63回大会以来、41年ぶりだ。

 「このまま一気にいきたい」と美濃。しぶとく、こつこつと。今夏の名電はひと味違う。(山口裕起)