先制打に同点打に盗塁阻止 一関学院・後藤、仲間を語る時だけ声が…

奈良美里
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 (12日、全国高校野球選手権大会2回戦 明豊7-5一関学院)

 第104回全国高校野球選手権大会第7日の12日、一関学院は明豊(大分)に5―7で敗れたが、強豪相手に九回まで同点の接戦を演じた。追い越されても食らいつく、岩手大会から変わらぬ、つなぐ野球。「来年、また来いよ」。主将の言葉を胸に刻んだ後輩たち。思いは、つながっていく。

     ◇

 (12日甲子園、明豊7―5一関学院)

 ここぞの場面で、打って、守った。先制打に同点打、盗塁阻止。この試合の攻守の要は間違いなく後藤叶翔捕手(3年)だった。

 1点を勝ち越された七回。いつも通り「つなぐ気持ち」で打席に入った。ボールを見極め、5球目。中前に適時打を放ち、試合を振り出しに戻した。昨春の選抜準優勝校の明豊相手に、接戦を繰り広げた。

 「すべてに感謝」。後藤捕手の好きな言葉だ。

 様々な人に支えられてきた。特に故郷の岩手県陸前高田市に住む祖父母の石川秀一さんと春枝さんに感謝する。元高校球児の秀一さんは幼い頃から野球を教えてくれた。キャッチボールをし、ノックも打ってくれた。春枝さんの料理はおいしくて、たくさん食べられる。

 2011年3月11日。

 故郷を津波が襲った。自宅にいた後藤捕手は、両親と一緒に高台に避難した。祖父母の家も、自分の家も流された。「津波を見たのは初めて。怖いという気持ちしかなかった」。家を建て直し、祖父母と一緒に住むようになった。「おじいちゃんとおばあちゃんがいたから、やってこられました」

 大半の選手が寮生活を送る一関学院。高校からは家族と離れて暮らした。寂しかったが、その分野球に打ち込んだ。全体練習が終わると、誰よりも早くグラウンドに戻り、自主練。特に打撃練習に力を入れた。チームメートに投げてもらい、振り込む日々。低い打球を打つことを心がけた。

 結果はついてきた。岩手大会は4番として3試合連続本塁打。甲子園でも2試合で計6本の安打を放つ。

 捕手としても、層が厚い投手陣をまとめた。この日の試合も4人の後輩投手を強気のリードで引っ張った。四球が出ると、すぐにマウンドに駆け寄る。「楽しんで投げよう」。七回からマウンドを任された1年生の高沢奏大投手は「後藤さんはとても頼もしくていつも寄り添ってくれる」。

 同点で迎えた九回。勝ち越しを許し、夏が終わった。「この仲間と野球できるのが最後だったし、次につなげたかった」。試合後、いつも表情を崩さない後藤捕手は、仲間の話をした時だけ声が震えていた。

 でも、支えてくれた人たちは、感謝の気持ちで戦う姿を見ていたはずだ。

 「最後の夏を甲子園の舞台でプレーできて幸せです」(奈良美里)