戦争下、女性が担うケア労働 身近な命いつくしむ 小川公代さん寄稿

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小川公代さん|英文学者(寄稿)

 ロシア軍のウクライナ侵攻は、間もなく半年を迎える。戦地では多くの女性が戦闘行為やその支援業務に従事している。『ケアの倫理とエンパワメント』の著者で英文学者の小川公代さんは寄稿で、戦争とケアをめぐる文学の系譜をたどりながら、戦争の現場でケアを担う女性たちの多様な姿を見過ごしてはならないと訴える。

     ◇

 現代の戦争は女の顔をしているだろうか。ロシアによる侵攻が続くウクライナで、じつは兵士として前線で戦う女性が少なくないという報道を今年7月に目にした。2014年のクリミア併合以降に女性戦闘員が増加していたにもかかわらず、数年の間は彼女たちを「戦闘員」として記録されることが禁じられ、「会計係や掃除係」として文書化されたという。

 クリミア戦争で負傷兵たちを献身的に看護したフローレンス・ナイチンゲールはよく知られているが、そもそも、第三者の立場から、戦場において非戦闘員が担う医療や料理、洗濯などのケア労働が語られることはめったにない。

 そういう意味で、ベラルーシノーベル文学賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチが、看護師や洗濯係を含め、第2次大戦当時の独ソ戦に従軍した女性兵士たちを取材した証言集『戦争は女の顔をしていない』(1984年)は画期的である。

 そのことは他の著名な戦争ルポと比べてみても分かる。林芙美子の『戦線』とジョージ・オーウェルの『カタロニア讃歌(さんか)』は、奇(く)しくも1938年、同じ年に刊行されている。

後半では、『嵐が丘』の作者エミリー・ブロンテに触れます。

 陸軍第六師団の漢口攻略に随…

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2022年8月15日17時24分 投稿
    【視点】

    昨日・今日と掲載された国末記者によるブチャ虐殺に関する生々しい報告とあわせて読むと、戦場は人間をどのように変えてしまうのか、戦争でも変えられない人間性はあるのか、改めて考えさせられる。ブチャ虐殺を前にして、私たちは、人間の命を粗末に扱い、た