大雨最高級の「岩船」コシ直撃 新潟の産地で土砂流入、病虫害も懸念

宮坂知樹 長橋亮文
[PR]

 4日にかけて続いた記録的大雨は、これから本格的な収穫期を迎える日本一の米どころ新潟を直撃した。「魚沼産」と並び最高級のコシヒカリとして知られる「岩船産」の主要な産地、村上市と関川村は特に被害が深刻で、全体の2割近い1020ヘクタールの水田で土砂が流れ込んだり冠水したりした。手塩にかけた稲の惨状に、生産者は言葉を失い、先行きへの不安を募らせている。(宮坂知樹)

 村上市の川部地区。水田が広がる一帯を9日に歩くと、青々とした稲が土砂や流木になぎ倒され、茶色く埋もれているのが目についた。たまった水に実り始めた穂がつかっている様子もあちこちで見られた。

 「浸水した家の片づけで精いっぱい。田んぼのことは何もできてないですよ」。農家の佐藤稔さん(68)は当時、地区の役員の一人として非常時に備え公会堂に夜通し待機。一睡もできないまま水田に向かい、その状況を見て「笑うしかなかった」と話す。

 岩船産コシヒカリを育てる1・5ヘクタールの水田は、山崩れで一部が完全に埋まるなど全体の9割ほどに土砂が流入。「機械を使えば散乱した石や木の破片で壊れてしまう」とし、収穫は仮に生育が順調に進んでも難しいという。土砂の流入を免れた水田も、取水用のポンプが壊れて水を引けない。「雨が降れば何とかなるかもしれないけど……」

 30キロの機械を背負って肥料や農薬を散布する重労働を終え、あとは収穫を待つばかりという矢先に見舞われた大雨。「こればっかりはしょうがない。でも、汗を流してやってきて、これから穂が出て実っていくところでね」と肩を落とす。「今年はもう無理だろう。せめて来年はまたコメが作れるよう土砂を撤去してほしい」と訴える。

 農業生産法人「新潟ゆうき」(村上市川部)の佐藤正志社長(71)は、「いまだに被害の全容は見えていない」と話す。所有する40ヘクタールの3割でコシヒカリを作るほかは、米菓メーカーなど向けの非主食用米。わせ品種の「ゆきん子舞」は月内の収穫開始を控え、たわわに実った金色の穂が、土砂で塞がれてたまった水につかった。

 特に心配なのは、たまった水から寄生した菌が稲を枯らす「いもち病」。感染力が強く、ひとたび発生すると一気に広がる恐れがある。また、カメムシが生息していた雑草が冠水で枯れたことで、穂についてコメの汁を吸う被害も懸念されるという。

 「収穫量が減って取引先に迷惑をかけるかもしれない」。佐藤社長は気をもんでいる。

水田・水路に被害 県「支援検討」

 岩船産コシヒカリは、村上市や関川村などの岩船地域で荒川や三面(みおもて)川の清流に恵まれて育つ。日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」で魚沼などと並んで最上位「特A」の常連だ。

 県によると、村上と関川の両市村で昨年度コメが作付けされたのは6230ヘクタール。今回の大雨では1020ヘクタールで冠水などが確認されたほか、2150ヘクタールで1日程度稲が水につかる被害があった。村上市のまとめでは、荒川、神林両地区の約3300ヘクタールで取水できなくなり、さらに広い範囲で水田や水路に土砂や流木が流れ込んでいるという。

 JAにいがた岩船の担当者は「田んぼは水を入れられないと、復旧に時間がかかるほど被害が大きくなる」とし、「現状では具体的に出しようがないが、被害額はかなりのものになりそうだ」とみる。県の担当者は「どんな支援が必要で、どんな支援ができるか、これから関係する各課で検討する」としている。

 村上市の高橋邦芳市長は「被害を免れた稲はしっかり守る。被害を受けた地域については復活を見据えていく」と決意を語った。

県や日本赤十字 義援金の受け付け

 県や日本赤十字社県支部は12日、被災者への義援金の受け付けを始めた。第四北越銀行や大光銀行、ゆうちょ銀行など四つの金融機関に設けられた9口座に入金するほか、県の電子申請システムを利用すればキャッシュレス決済もできる。来年3月31日まで。「義援金配分委員会」で被害程度に応じて対象者や金額などを決め、各市町村を通じて届ける。(長橋亮文)