コロナ乗り越えた先に「奇跡の試合」 聖地で力出し切った4校に笑み

大村久、三島庸孝、野田佑介、杉浦奈実
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 大会第8日の13日、組み合わせ抽選会前に新型コロナウイルスの集団感染と判断された4校が登場した。有田工(佐賀)と浜田(島根)、九州学院(熊本)と帝京五(愛媛)が対戦した。「感謝しかない」。大舞台でプレーできたことに、笑みがこぼれた。

 有田工と浜田の第1試合。有田工の最後の打者がアウトになって整列すると、選手たちは審判から声をかけられた。

 「コロナの中で耐え抜いて試合をすることができた。『奇跡の試合』だ」

 敗れた有田工の上(かん)原(ばる)風雅主将は、「悔いなく終わることができた」と涙があふれた。

 陽性となった選手の回復期間を確保するため、4校の初戦は抽選会から10日後の13日に設定された。選手たちは、感染拡大と出場辞退の不安の中で、初戦までを過ごしてきた。

 有田工の選手は7月末、梅崎信司監督から自宅待機を告げられた。「甲子園出られるかな」「自主練習はどがんしょっか」。仲間同士でささやき合った。

 自宅待機中、暑さ対策と体力維持のため、昼間に2時間走ったり、素振りをしたりして過ごした。LINEで「なんかあっや」と互いに体調の確認もした。「どがんなっちゃろねえ」と出場できるか不安の声もあったが、上原主将は「『大丈夫』ってやつがほとんどやったけんが、それで安心した」という。

 初出場の帝京五は愛媛大会決勝後、体調不良者が増えた。2日の甲子園入りを見合わせ、寮生は帰省した。

 住吉栄祐主将は和歌山の自宅に戻り、抽選会の中継を見守った。「出場辞退があるかもと思っていたので、感謝しかない」。自宅近くで中学時代の指導者と練習をしたり、ランニングをしたりして調整した。

 ほかの選手らもそれぞれ筋力トレーニングや走り込みをして過ごし、11日に甲子園入りした。

 浜田の岡海善(かいぜん)主将は球場に入ると観客に圧倒された。緊張が高まった。グラウンドに立つと、三塁側のアルプス席から吹奏楽が聞こえてきた。応援団は赤いメガホンを揺らしながら、選手たちにエールを送っていた。

 「いろんな人に支えられてここにいるんだ」

 全体練習が十分できなかった。でも、甲子園に出られて幸せなチームだと感じた。試合は中盤に集中打が出て、18年ぶりに夏の甲子園で勝利を挙げた。岡主将は「この1勝は支えてくださった方への恩返しになったと思います」。

 九州学院の選手は、久しぶりの公式戦だったが落ち着いたプレーをみせた。えんじ色に染まったアルプス席からの大応援が力になった。中堅手の大城戸陸琥(おおきどりく)君は「コロナの状況でも試合をさせてもらえて、思い切って楽しむことができた」という。

 有田工の上原主将は、試合終了直後に審判から「胸を張って帰れよ」と言われ、先輩たちのことが思い浮かんだ。2年前は大会が中止になり、甲子園を目指すこともできなかった。試合で少しは恩返しができたかな、と思った。仲間への感謝も口にした。

 「3年間の中で一番楽しかった。いい仲間たちでした」(大村久、三島庸孝、野田佑介、杉浦奈実)