なぜ日本人は英語を話せない? NHK人気講師「これで話せます」

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聞き手・山根祐作
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 どうして、日本人は英語がしゃべれないのか――。NHKのラジオとテレビで英会話講座の講師を務める大西泰斗さん(60)は、この問いに長年、向き合ってきました。従来の学校文法にとらわれない、「話せるようになるため」の英文法による明快な解説とユーモアあふれる語り口は、多くの視聴者の支持を得ています。「最悪」だったという学校英語との初対面を経て、英語をどう学び、どう教えてきたのかについて、聞きました。

 ――子どもの頃、英語との最初の出会いは、どのようなものでしたか?

 「父は海外に機械を輸出する会社に勤めていて、実地で身につけた英語とドイツ語が堪能でした。高度経済成長期のモーレツ社員を絵に描いたような人で、普段は夜も僕が起きている間にうちに帰ってくることはほとんどありませんでした。でも、日曜日だけは、父と一緒によくレコードを聴きました。父が好きだったフランク・シナトラやディーン・マーチンなど1950年代のアメリカの流行歌で、英語はまだ自分にとっては無意味な記号でしたが、かっこいいなと感じました」

 「小学生の頃、日曜日に英語を教えてもらったこともありました。でも、父は短気で、僕が覚えが悪いと『もうおまえには教えん』みたいになってしまいましたね」

 「当時は英語などに興味はなく、毎日、家の前の野原で昆虫を捕まえるのに夢中でした。虫って見れば見るほど、例えば、イナゴの前脚の関節とか、どうしてこうなっているんだろうかと不思議で、気になるんですね。日がな一日、野原に座り込んで、虫を観察しているような子どもでした」

「ずいぶん理不尽な言葉なんだな」

 ――中学、高校での英語の授業はどうでしたか?

 「英語っていうのは、ずいぶん理不尽な言葉なんだなと思っていました。中学1年の最初の中間テストで『What is that?(あれは何ですか?)』という質問に答えるような問題があって、僕は『That is a pen(あれはペンです)』と答えましたが、正解は『It is a pen(ペンです)』。『あれは』と聞かれ、『あれは』と答えて、どうして間違いなんだろうと思いますよね。先生に質問しても、英語はそうなっているんだという説明だけ。学校英語との初対面は最悪でしたね」

 「高校に進んでも、英語だけはどうも苦手でした。数学は、やればやるほど仕組みがわかって面白くなる。国語は、やればやるほど読みが深くなってくる。社会は、歴史の周辺を知って興味を持つ、となっていくんですが、英語だけは、仕組みも分からずただ暗記するだけでしたから、そもそも楽しくないんです」

 「自分の頭で考える習慣のある人なら誰でも、英語学習にはつまずくのではないでしょうか。例えば、『Who is he?(彼は誰ですか?)』という文で使っていた疑問詞の『who』が突然、関係代名詞と呼ばれ、文をつなぐと説明されます。さらに『who』の代わりに『that』を使ってもいいし、省略されることもあるとまで言われる。つないでいたのではなかったのでしょうか? 説明が行き当たりばったりで、1本の筋道として理解できるようになっていないのです。論理的に考えれば考えるほど泥沼ですよ。結局、頭を空っぽにして覚えるしかないんだと。これではやる気がでません。大学入試の共通1次試験でも、英語の得点が一番低かったように記憶しています」

中学、高校での英語学習に悩んだ大西泰斗さん。記事の後半では、大学での目の覚めるようなうれしい体験を経て、自分で考え出した「話せるようになるため」の英文法について語ってくれました。

 ――大学は、筑波大学に進んだのですね。

 「学校の教員を志望していたので、東京教育大学を母体に設立された筑波大学を選びました。大学の新入生を集めてオリエンテーションが開かれ、どの教科の先生になるかということで分けられたのですが、その時に英語を志望しました。万葉集源氏物語に興味があったので、国語の先生になろうかとも迷いましたが、決め手になったのは『リベンジ』でしょうか。なぜあのような理不尽な教え方が通るんだろうか、という思いです。子どもの頃に観察していたイナゴの脚の動き方ひとつを取っても理路がある。それが英語には見えない。ひっかかっていたんですね」

 「当時、中村雅俊さん主演の…

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    千正康裕
    (株式会社千正組代表・元厚労省官僚)
    2022年8月18日19時44分 投稿
    【視点】

    僕がインド(仕事は全部英語)勤務を命じられた時のTOEICスコアは485点。全く英語ができなかった。しかし、赴任して2年経ったくらいの頃には、国内から出張してきた国際派の人に留学経験者と勘違いされるくらいに使いこなせるようになった。