イチローさんの教えは「覚悟をもて」 高松商・井桜、放った決勝打
15日、全国高校野球選手権大会3回戦 九州国際大付1-2高松商
チームを離れた仲間を思い、打ったタイムリーだった。
1―1の四回2死一、二塁。高松商の2番・井桜悠人が左打席へ。
「2人の分まで打ってやる」
初球。外角へ逃げていく変化球に右足を踏み込み、思い切りよく引っ張った。
「落ちてくれ」
ふわりと舞った打球が右翼手の前にぽとり。勝ち越しの1点を奪い、一塁を回ると、両手をたたいた。
初戦の2回戦を突破した後、4番の本田倫太郎と6番の林息吹が登録選手から外れた。2人は涙を流していた。
決してプレッシャーに強いタイプではない。
すぐ前の1番を打つのは、高校通算66本塁打で全国屈指の強打者、浅野翔吾。長尾健司監督からは「浅野は満塁でも敬遠されることはある」とまで言われてきた。
「自分がチャンスで打てなかったら、負けにつながる」
そう重圧を感じてきた。
支えになったのは、昨冬に臨時コーチとして指導に来てくれた元大リーガーのイチローさんの教えだ。
「覚悟をもて」
そう言われた。浅野が四球を選んで巡ってきた四回の好機。「(先発の)渡辺和大が踏ん張っていた。覚悟をもって打席に入った」
努力家だ。重いメディシンボールを黙々と1人で建物の壁に投げて体幹を鍛えてきた。
誤ってガラスを割ってしまったことがある。
この日の試合後、長尾監督は「ガラスの片付けが大変でした」と苦笑し、「でも、きょうはよく打ってくれた。予想以上です」と喜んだ。
8強進出は52年ぶり。
まだまだ負けるわけにはいかない。(堤之剛)