大阪桐蔭・伊藤の忘れられない1戦 聖地で二塁打3本放つまでの努力
(16日、第104回全国高校野球選手権大会3回戦 大阪桐蔭4―0二松学舎大付)
四回裏1死。伊藤櫂人(かいと)君(3年)が初球を振り抜くと、鋭い金属音が甲子園に響いた。深めに守るレフトの前に打球が転がり、伊藤君は一気に二塁へ。さらに敵失の間に三塁を奪った。相手投手の暴投で貴重な4点目のホームを踏んだ。
大阪桐蔭の選手たちが普段から心がけるチームテーマの「一打二進」。短打でも常に次の塁を狙う積極的な走塁のことだ。これを実践した伊藤君は、「自分たちから攻めていこうという気持ちでチームに勢いをつけられた」と振り返る。
伊藤君には忘れられない試合がある。5月末にあった春季近畿地区大会、智弁和歌山との決勝戦だ。
1点を追う九回裏。一打同点となる2死二塁で伊藤君に打順が回ってきたが、レフトフライに打ち取られてゲームセット。昨秋から続いていたチームの公式戦連勝記録が29で止まった。
新チーム結成以来、初めての劣勢の場面。伊藤君は打席の中で「やばいな」と思ってしまっていた。
試合後は「何で打てへんかったんやろ」と、涙がこぼれてきた。控え捕手の砂川佑真君(3年)に肩を支えられて球場を去った。
それから約2カ月半。伊藤君は練習では常に、劣勢に立たされた「あの試合」をイメージしながら、バットを振り込んできた。
この日は終始リードする展開に持ち込めた。伊藤君は一回に二塁打で出塁して生還するなど、3本の二塁打を放ち、本塁に2回生還する活躍を見せた。
それでも試合後は、「七回のチャンスで打てなかったので、半分くらいの点数」と反省点を口にした。
次は準々決勝の下関国際戦。伊藤君は「どれだけ自分たちが攻めて、泥臭く、自分たちが束になって戦えるか。一戦必勝でやっていきたい」と意気込んだ。(岡純太郎)
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