星空をラジオで異例の生解説 「あ、なんか動いている」プロも興奮

渡辺翔太郎
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 プラネタリウムの解説員が屋外に出て、夜空を見上げながらリスナーに星を語る――。鳥取県米子市のコミュニティーFM放送局「DARAZ(だらず) FM」の「ラジオプラネタリウム」が、人気を呼んでいる。生の解説を大切にしたいという思いが、全国的にも珍しい「ラジオでのリアル星空解説」を支えている。

 夕闇が濃くなったとある晩。米子市内の駐車場に止めた軽ワゴンそばのスピーカーから、「星に願いを」のBGMと、「広い星空の下で、いっしょに星座を探してください」というセリフが流れてきた。

 午後8時半、「ラジオプラネタリウム」が始まった。司会のトミさんが「いつものメンバー」とリスナーに紹介したのは、米子市児童文化センターでプラネタリウムの解説などにあたる森山慶一さん(26)と井田裕康さん(28)だ。

 この日の「スタジオ」になった郊外の駐車場には街灯も、出入りする車もなく、あたりは真っ暗。たよりは手もとの小さな赤いランプだけ。見上げると、「日本一」といわれる鳥取の夜空が広がっていた。

 BGMにあわせて、最近の宇宙についての話題を森山さんと井田さんが軽快な口調で語る。それから話は米子の星空へ。「地面から、にぎりこぶし6個分ぐらいのところに、非常に明るく、ぎらぎら輝くオレンジっぽい星がみえます。大山を左の方に見る感じ」

 麦刈りの季節になると日没後に頭上で輝くことから「麦刈り星」とも呼ばれるうしかい座のアークトゥルスを説明していた。と、そのとき。声のトーンがあがった。「あ、なんか動いている、動いている。米子からみている人は、オレンジ色っぽい星の下を、びよーんと。たぶん人工衛星ですね。……ああ、流れた。こういうハプニングが、この番組のよさですね」

 屋内のプラネタリウムとはひと味違う星空解説はその後、ギリシャ神話の巨人アトラスや春の星座などに話が広がった。関係者が「全国的にも珍しい」というFMでの星空生解説は、あっというまに終わった。

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 市児童文化センターのオープンは1983年。センター内のプラネタリウムで上映も始まったが、当時はできあがった番組の投影が中心だったという。

 プラネタリウムは最初のうちは人気があったが、年が経つにつれ、観覧者は減っていった。独自の番組を作ってみたが、観覧者増にはつながらない。当時の職員が考え抜き、たどりついたのが生解説だった。ヒントになったのは、読み聞かせ。子どもが絵本や紙芝居に夢中になるように、できあいの番組ではなく、職員が心を込めて語りかけることで、観覧者の心をつかむことができるのではないか――。

 センターでは2000年ごろから、季節ごとの星や星座、その時々の天文現象を職員が説明する生解説に力をいれるように。その延長線上で生まれたのが、職員が屋外で夜空を見上げながら解説する「ラジオプラネタリウム」だった。

 ラジオプラネタリウムの第1回のオンエアは16年春。ちょうどこのころセンターの職員になった森山さんは、第1回のラジオプラネタリウムがセンターの前庭でオンエアされるのを見たという。

 館内のプラネタリウムなら、星の位置を示す矢印や星座の形や絵が映し出されるが、実際の星空にはそんな矢印も絵もない。そもそも、ほとんどのプラネタリウムは座席の正面が南になっているが、ラジオのリスナーがどちらを向いているか分からない。

 リスナーをイメージして、「大山を正面にしたとき右手が南ですよ」などと説明を工夫するほか、普段から実際の星空を見て、すごいと思ったことを伝えるように心がけているという。森山さんは「流れ星などの感動をリアルタイムで共有できるのが、ラジオプラネタリウムのいいところ」という。

 井田さんは「夜空を見上げたとき、どの星をつなげれば星座になるのか分からないという人も多い。でもラジオを聴いていれば、私たち解説員が横にいて説明するのと同じ」と話す。「ラジオプラネタリウムを聴きながら夜空を見上げれば、きっと星座を見つけられます」

 だらずFMは、米子市や日吉津村の全域とその周辺のほか、島根県安来市松江市の一部で聴くことができる。またスマホのアプリならエリアを問わず聴ける。ラジオプラネタリウムは雲が多いと延期になるが、放送予定はだらずFMのHP(http://www.darazfm.com/別ウインドウで開きます)で確認できる。(渡辺翔太郎)