訪日客「全然来えへん」 厳しい入国要件、「日本離れ」はまだ続く?

有料記事

中村建太、高橋豪 松本真弥 市野塊
[PR]

 海外からの観光客の受け入れが今夏に再開したが、7月の訪日外国人客数に大きな回復は見られなかった。多くの外国人が行き交った観光地のにぎわいは薄れたまま。新型コロナウイルスの水際対策の厳しさから、観光客が他国に流れる「ジャパン・パッシング」を懸念する声もあがる。

頼みの訪日客が現れない

 鮮魚店などが並ぶ大阪・ミナミの商店街「黒門市場」。コロナ禍前に通りを埋め尽くしていた訪日観光客の姿は、いまはほとんど見られない。

 「香港や台湾の人はぎょうさん食べてくれてありがたかったんやけどなあ。いまは全然来えへん」

 創業150年近い鮮魚店「みな美」の秦一男社長(68)はそう話す。以前は店頭のカウンターでフグやハモの刺し身を食べていく訪日客が多かったが、最近はほぼ来ない。中国語などで書いた案内用のカードは棚にしまったままだ。

 店頭でウナギや岩ガキなどが食べられる「ふな定」で店の片付けをしていた男性従業員は、訪日観光客の受け入れ再開に大きな期待は寄せなかったという。「感染が広がっているのに政府は抑えられてない。そんな国に『ゼロコロナ』を掲げている中国の人が来てくれるわけないやないですか」

 店頭で飲める豆乳が訪日客に人気だった豆腐店「高橋食品」の高橋精一社長(46)によると、同店のある通りに面した約30店舗のうち半数ほどは長く休業が続いているという。

 訪日客の受け入れ再開後は欧米などからのツアー客をたまに見かけるようになったが、外国人客の8割を占めていた中国系の人たちが戻って来ないと実入りは増えにくい。「とにかく街が動いてくれないとにぎわいも戻らない」と嘆く。

 コーヒー豆専門店「グリーンビーンズパーラー」。いれたてのコーヒーが人気で、以前は数時間待ちもざらだった。訪日客は1人で数万円分のコーヒー豆や器具を買っていく人も多く、1日の売り上げが約20万円に達することもあったが、コロナ禍に入ってからはその3分の1ほどで推移している。

 店長の高岡裕仁さん(26)は「国内旅行客の方からは『せっかく来たのにシャッターの閉まった店が多い』という声も聞く」と話す。「結局インバウンドが戻ってこないことには、にぎわいも戻らない。にぎわいのない観光地からは国内の客も離れていってしまうのでは」と心配する。

 東京で訪日旅行を専門に扱うティ・エ・エス(TAS)では、7月にシンガポールやタイなどから約200人の観光客を受け入れたが、コロナ禍前の2019年の10分の1に満たない。「航空券の高騰でツアー代金が上がっている。今は富裕層が多く、コロナ禍前のようになるにはまだまだ時間がかかりそう」と担当者は話す。

 観光目的の入国は団体ツアーに限られているため、コロナ禍前に多かった個人旅行を好む層は、韓国やタイ、欧州を選ぶという。

 TASの担当者は「日本は条件が厳しすぎる。観光大国というわりに受け入れが遅れている」と話す。ツアーを組む際にも外国人観光客と聞いて断るレストランや施設も多く「ゼロベースになった」と頭を悩ませる。

 文化体験が人気の関東のあるレジャー施設は、コロナ前は来園者の3割ほどを占めていた訪日客の姿がまだほとんど見られず、秋にかけても来園予定があまりないという。担当者は「これが現状。(このエリアは)海外の人でもっていたところがあるので、早くコロナ前に戻るよう期待したい」と話す。(中村建太、高橋豪)

迫る「観光孤立国」への危機感

 海外からの観光客が低調な背景には、日本の入国要件の厳しさがある。

 英国を拠点に訪日旅行を手が…

この記事は有料記事です。残り1325文字有料会員になると続きをお読みいただけます。