日本子育て支援大賞は「お金で買える?」 明石市長のツイートが波紋

中井なつみ
[PR]

 「『日本子育て支援大賞』というとイメージがいい。普通にいただけるなら、ありがたく思う。しかし、お金で賞を買うとなると、話は違う」

 兵庫県明石市の泉房穂市長が15日、こんなツイートをしたことが話題になっています。「お金で賞が買えるのか」。こんな疑問が噴出していることについて、主催者に話を聞いてきました。

泉房穂市長が連続投稿

 発端となったのは、泉市長が投稿したこんなつぶやきだ。

「受賞の条件として、『ロゴ使用料70万円』と『トロフィー代10万円』が必要だといわれた」「お金で賞を買うとなると、話は違う」「大人の世界だ…」

 受賞のための条件として、主催者から金銭を要求されたと読み取れる内容を連続して投稿した。SNSでも、「賞をお金で買えるのか」「公金の使い方として適正なのか」などという疑問が噴出するきっかけになっていた。

 ここで話題になった「日本子育て支援大賞」は、子育て支援に関するコンサルティングや講演活動を行う「一般社団法人日本子育て支援協会」(2013年設立、東京都)が運営する独自の賞だ。

 同協会によると、この賞は未来を担う子どもたちとその家族を社会全体で応援しようという考えのもと、20年に創設された。子育てに役立つ商品や、子育て支援に力を入れる自治体などを選び、毎年7月に表彰してきた。賞の選考に関する事務局業務については、ミキハウスなど数社の賛同で設立され、子育てに関する情報発信を行う「ミキハウス子育て総研」(00年創立、同)に委託している。

日本子育て支援協会に聞くと

 同協会の吉田勝彦理事長は、朝日新聞の取材に対し、「22年の大賞受賞者の候補にと、明石市を推薦していたことは事実」としながらも、「受賞のためにと金銭を要求した事実はなく、説明に不足があったのかもしれない」と話す。

 同協会によると、泉市長からは、大賞に推薦されたことを伝えたあと、直接電話で問い合わせがあった。希望する場合、ロゴマークの使用やトロフィーを購入してもらうケースがあることに触れ、「お金が必要なケースがある」ことを事実として伝えた。ただ、その後に審査に必要な書類の提出がなかったため、明石市のエントリーは見送りにせざるを得ず、審査もできていなかったと説明する。

 同協会によると、同賞の受賞の前段階において、金銭が必要なケースはこれまでも一切なく、エントリーから審査、受賞決定後の表彰状の授与などはすべて無償で行ってきている。

 今回の大賞でも、200を超えるエントリーの中から、企業部門33件、自治体部門4件が大賞に選ばれたが、この段階までは、受賞者に発生する金銭的な負担はない。

トロフィーは有料

 ただ、受賞した企業や自治体の判断で、他社の製品や他自治体との差別化をはかるため、パッケージやパンフレットにロゴマークの掲出を希望した場合や、記念品としてトロフィーが欲しいという場合には、それぞれ有償で負担を求めているという。

 吉田理事長も「選考にも人件費がかかっている。そうした意味でも、無償で全てを行うのは現実的ではないため」とする。

 一部では、「金銭で賞が買えるのか」という批判も上がっていたが、吉田理事長は「大賞のロゴマークの掲出にメリットを感じてもらえるのであれば、と希望するところに負担をお願いしていた」とする。「負担の有無が、賞の審査に影響することはない」と強調する。

 「これまでも、負担をいただく受賞者と、そうではない受賞者がいたのは事実。どの団体からもお金をいただいていない以上、賞の運営にも費用が必要だったが、今回の件で賞の受賞自体に疑惑がかかっていることは、とても心苦しい。誤解を招いてしまっていたら、申し訳ない」

 今回、企業部門で大賞を受賞した33企業のうち、ロゴマークの使用を希望して購入を決めたのは22企業。自治体部門で受賞した4自治体は、いずれも「ロゴマークは必要ない」と、使用料は発生していなかった。

受賞した自治体「悲しい思いも」

 現在、同協会には、過去に受賞した企業や自治体からも混乱の声が寄せられているという。「トロフィーなどを購入していないが、受賞できたことに間違いはないか」「一般の消費者から、賞の選考について問い合わせがあった」などだ。また、賞について「お金を要求するやり方はおかしい」というようなメールも届いているという。

 これまでに大賞を受賞したある自治体では、お金は払っていないという。担当者は、「施策や取り組みを純粋に評価していただいたと思って喜んでいる。『お金で買った』と思われてしまうことに、とても悲しい思いもある」と打ち明ける。

 同協会も「賞の認知度も上がってきて、こうした賞があることで子育て支援に関する取り組みや商品が盛り上がればとの思いだった。今後は、より丁寧な説明を心がけたい」と話す。

 同協会は18日、公式ホームページで「SNS上での『日本子育て支援大賞』に関する誤解について」とする文書を公表。「『日本子育て支援大賞』受賞に関して『金銭の授与が受賞の条件となっている』という情報が拡散されておりますが、事実ではございません。誤解が広がって、受賞自治体様、受賞企業様並びに社会の皆様には、お騒がせしておりますこと、心よりお詫(わ)び申し上げます」との見解を明らかにした。

 明石市の泉市長は、取材に対し「当初の説明では、無償でいただけることはないとの理解をせざるを得なかった」とする。泉市長は「市民の貴重な税金を支出することには慎重な判断が必要なため、『お金がかからないのであれば、ありがたくいただく』というスタンスを貫いている。どのような賞であっても、自治体への表彰に対してお金がかかってしまうシステムへの疑問は持ち続けている」と話している。(中井なつみ)