イスラム主義勢力タリバンが昨年8月に復権したアフガニスタンで、文化財の修繕や調査が停滞している。政変による混乱のさなか、貴重な仏教遺跡の壁画がはぎ取られる被害も出ている。
6月上旬、中部バーミヤンにある世界遺産の仏教遺跡群には一般の観光客に交じり、銃を持ったタリバンの戦闘員たちがいた。偶像崇拝を禁じるタリバンによって2001年に爆破された西大仏(高さ55メートル)の石窟(せっくつ)を眺めた後、立ち入り禁止となっている遺物の保管庫に入ったり、石窟内の階段をよじ登ったりしていた。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の支援のもと日独などが修復作業を続けてきた。
ところが、文化財保護に詳しい現地の専門家は朝日新聞の取材に対し、「今年に入り、石窟内の仏教壁画の一部が盗まれていたことが分かった」と証言した。保存状態が良く、鮮明な壁画は石窟にドアを設置し、鍵をかけて守ってきたが、少なくとも5点がはぎ取られたという。「文化財としての価値の高い壁画ばかりがはぎ取られていたようだ。手慣れた者の犯行だろう」と指摘する。
さらに、タリバンの暫定政権…