新秩父宮ラグビー場は人工芝でいいのか? 反対の声かき消す事情とは
「本当に屋根を閉じて、人工芝にするの?」
ラグビーのフランス代表と日本代表のテストマッチが行われた7月9日の東京・国立競技場。VIPが集まるラウンジで、日本スポーツ振興センター(JSC)の幹部に日本ラグビー協会の幹部から、そんな趣旨の疑問が投げかけられたという。
日本ラグビー協会幹部の懸念は、新たに建て替えられる秩父宮ラグビー場が人工芝となる前提で話が進んでいる点にあった。
同ラグビー場を管理運営しているのは文部科学省の外郭団体、JSCである。
JSCは、神宮第2球場の跡地に2024年に着工する予定の新ラグビー場の事業体の入札を行っていた。
8月22日にその落札企業は、鹿島や三井不動産、東京ドームなどで構成される事業グループに決まった。7月はまだ、入札の最中だった。
新ラグビー場が完全密閉型のドーム形競技場になる方針は決まっていた。屋根を完全にとじる競技場では基本的に天然芝の育成に必要となる太陽光などを十分に確保できない。
また、収益性の高い音楽ライブを開催する際に機材を設置することを考えると、人工芝で整備する方が都合がいいという側面があった。
なぜ日本ラグビー協会は人工芝を了承したのか。議論ではハイブリッド芝の導入も検討されました。また最初はドーム形でなかったスタジアムの仕様が変わったのはなぜなのか。記事の後半では新ラグビー場を巡る方針の変遷をたどります。
日本ラグビー協会はラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が開催される前の19年6月の理事会で、新ラグビー場を人工芝とする方針を了承している。
「ラグビーの聖地」と呼ばれる秩父宮ラグビー場を人工芝とすることに、協会内では以前、抵抗感を示す声が少なくなかった。
「でも、仕方がなかった。あの時は」
ある日本ラグビー協会の幹部…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら