「弱者が強者に勝つ」下関国際の全員野球 目の色が変わったあの敗戦
(22日、第104回全国高校野球選手権大会決勝 仙台育英8-1下関国際)
下関国際の左腕古賀康誠は、むせび泣き、しばらく立てなかった。坂原秀尚監督に肩を押されるようにして、ゲームセット後の整列に加わった。
今大会全5試合に先発。準決勝から中1日で、課題の制球を修正し、試合を作った。五回途中3失点で降板し、仲間の逆転を願ったが、届かなかった。
マウンドでは顔色一つ変えないエースが、涙に暮れた日が過去にもある。
昨年10月、春の選抜大会出場につながる秋季中国地区大会の広陵(広島)との準々決勝だ。先発したが、踏ん張れず3失点。チームは1安打で完封負けを喫した。
前チームからの主力も多かった下関国際は、この大会で優勝を狙っていた。左腕は、選抜大会出場を逃した責任を背負い込み、人目をはばからず泣いた。
以来、チームは目の色を変えて猛練習してきた。
3年生29人全員が設定タイムを切らないといけない800メートル走では、遅れそうな部員の背中を他の部員が押し、走りきった。結束もより強まった。厳しい練習に手抜きは一切なかった。
坂原監督も、これを機に朝練習を廃止した。睡眠時間が増えたことで心に余裕が生まれた。選手たちは自主的に野球を勉強するようになり、会話も増えた。筋力は効率的にアップした。
中学時代に野球で実績がある選手はほぼいない。「弱者が強者に勝つ野球」を掲げ、キャッチャーフライにも外野が詰めてくるほどカバーを徹底した。
本塁打0でもしぶとくつなぐ攻撃で、個の力を補ってきた。
準々決勝では大阪桐蔭の前田悠伍、準決勝では近江(滋賀)の山田陽翔(はると)。小中学時代から日本代表だった投手を束になって攻略した。
「準優勝はとても悔しいが、厳しい練習の成果は出せた」と古賀。坂原監督も、ともに涙を流して選手をねぎらった。「あきらめない大切さを、生徒から教えてもらった」(安藤仙一朗)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。