「二度とぶれないで」五木村長インタビュー

聞き手・大貫聡子
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 【熊本】川辺川への流水型ダム建設を明記した「球磨川水系河川整備計画」が8月、正式決定した。ダム建設で一部が水没する五木村は半世紀以上にわたりダム問題に翻弄(ほんろう)されてきた。木下丈二村長(63)にダムへの賛否や国や県に望むことを聞いた。

 ――計画策定にあたり、知事を通じて国に提出した意見では、ダムへの賛否については触れなかった。

 賛成、反対を判断できる材料がない。流水型ダムは洪水時のみ水をためる。では、水が引いたあとどうなるのかや環境影響評価の結果、村振興の具体策、そうした情報がまだない。最終判断するのはそれからだ。

 ――1966年に川辺川ダム計画が発表され、村議会のダム建設反対決議など、村を二分するような議論を経て82年に受け入れに転じた。だが2008年になって、蒲島郁夫知事が「白紙撤回」を表明した経緯がある。

 これまで、苦渋の決断でダム建設を受け入れ、用地の提供や代替地への住宅移転など全て協力してきた。その結果、多くの離村者を含む急激な人口減少に苦慮することになった。そのさなかに知事の撤回表明を受け、ダムによる振興は不透明になった。このような紆余(うよ)曲折の歴史を十分踏まえ、二度とぶれずに住民に寄り添う対応をしてほしいという思いで意見を書いた。

 ――振興策とは具体的にどういうものを望んでいるのか。

 都会と違って村には大きな会社もない。産業、教育、子育て、高齢者福祉、トータルで整備して、若い世代が五木村で暮らしていけるようにしてほしい。

 ――河川整備計画では、ダムを整備する際の地域住民との合意形成について「丁寧な説明を行い、合意形成をはかりながら事業を実施する」とある。村の民意をどうはかるのか。

 最終的には住民大会を開き、総意を聞く。私も意見を表明するつもりだ。

 6月20日から8月10日にかけて村内23地区をめぐり25回にわたって今後の村政について意見を聞いた。流域治水に関心のある住民からは、環境をしっかり守ってくれ、災害が不安だ、などさまざまな意見が出た。

 ――今年度中にも国はダムの設計や模型実験などに着手するとしている。今後については。

 ダムは下流域の人の生命、財産を守り、上流域は水没する。そうした二面性はあるが、一刻も早く安全を、と願う気持ちと、速やかな振興を願う気持ちは一緒だ。

 計画のなかに上流域の振興が正式に位置づけられた。住民の不安の解消、そして振興についてはなるべく早く進めてもらいたい。国と県には村の歴史も踏まえ、しっかり取り組んで欲しい。(聞き手・大貫聡子)

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 きのした・じょうじ 五木村生まれ。東京農業大農学部卒業。2001~09年に村議、09年からは副村長を2期8年務め、19年10月の村長選で無投票当選