髪の毛1本に宿る「存在」の神秘 野田弘志が語るリアリズム絵画
西田理人
現代日本のリアリズム絵画の旗手・野田弘志。求道者のごとく「存在」の神秘を探求する86歳の画家は、写実の極みを目指して今なおキャンバスに向かい続けている。静謐(せいひつ)にして緊張感に満ちた画面を前にした鑑賞体験は、崇高な啓示の瞬間にたとえることもできるかもしれない。
兵庫県の姫路市立美術館で開催中の「野田弘志―真理のリアリズム」展(朝日新聞社など主催)は、画家の過去最大規模となる回顧展。イラストレーター時代に手がけたポスターから、新聞小説の挿絵、最新の大型絵画に至るまで、のべ約200点を集めて画業の全容を紹介する。
東京芸術大学を卒業後、広告会社で働いた野田は、過労で病を患ったことなどを契機に、34歳で画家一本の道を歩む決意を固める。以後、同時代に流行していた抽象表現とは一線を画し、一貫して写実の神髄を追究してきた。
「リアリズム絵画」とは何か。
野田によれば、それは髪の毛…
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