下水処理場でつくる神戸のリン、肥料高騰で商機?
【兵庫】ウクライナ侵攻などで肥料の価格が高騰するなか、神戸市内の下水処理場で採れるリンを使った肥料「こうべハーベスト」のPRに市が力を入れている。リンの地産地消を売りに、今年度からは条件付きで購入費の全額を補助する施策を始めた。肥料の需要を増やし、リンの生産量も上げていきたい考えだ。
こうべハーベストは、下水処理場の配管に詰まる結晶化したリンを活用しようと、市が2012年度から東灘処理場で研究開発を進め作った肥料だ。精製した「こうべ再生リン」をメーカーに売り、他の材料と混ぜて園芸用、水稲用など3種類を販売してきた。
20年度には事業化したが、知名度の低さなどからこうべハーベストの販売は苦戦。東灘処理場の再生リン生産能力は年間約130トンありながら、出荷量は二十数トンにとどまっていたという。
風向きが変わったのは昨年以降だ。リンはほとんどを海外からの輸入に頼るが、中国からの輸入が減り、燃料費の高騰などもあって値段が倍ほどに上がった。こうべ再生リンは1キロ45円。以前は輸入リンの倍の値段だったが、いまや同じ水準になったという。
リン以外の材料価格の高騰などもあってこうべハーベストの値段も1・4倍ほどに上がり、輸入リンを使った肥料に対して直接的に価格競争力が強まったわけではない。ただ、確実に生産できるこうべ再生リンを使った肥料は、食料安全保障の観点からも優れているとして、生産者にアピールする好機だと市は捉えた。
肥料価格が高騰するなか、市は今年度、こうべハーベストのPRと農業支援を目的にした補助金を拡充。市内の農家に対し、園芸用は10アールあたり8袋(160キログラム)相当額、水稲用は学校給食用米の作付面積10アールあたり2袋(40キログラム)相当額を上限に、購入額の全額を補助する。
申し込みは9月末までだが、JA兵庫六甲によると、すでに数百単位で申し込み希望があるという。「今までは使い慣れた肥料を変えるほどの動機がなかったが、肥料が値上がりする中、今後のことを考えて一度使ってみようという農家が多いようだ」と担当者。一部の肥料が手に入りにくくなっていることも背景にあるとみている。
市によると、こうべ再生リンについても、肥料メーカーや研究機関からの問い合わせが増えているという。今後、東灘処理場の生産能力分の需要を獲得できれば、市内の他の3処理場に生産拠点を広げることも検討する。そうすれば市内農家だけでなく、市外向けの販売もできるようになる見込みだ。(鈴木春香)
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