記者コラム「多事奏論」 原真人
日本政治はこの10年、安倍晋三元首相の路線の是非をめぐる対立軸で動いてきた。菅、岸田両政権でもその構図は引き継がれ安倍氏が亡くなったいまに至っても続く。
外交、安全保障もそうだが、とりわけ経済政策は安倍政治の呪縛が強い。第2次安倍政権を国政選挙6連勝に導いた「政治資産」の多くをアベノミクスが稼ぎ出した、と言われるからだ。その可否は今後の国民生活の行方を左右すると言ってもいい。
アベノミクスの核心、それは先進国家にとって禁断とされていた「錬金術」に手を染めたことである。日本銀行に大量の紙幣(電子データも含む)を刷らせ、国債を買い上げさせて悪化する借金財政を支えた。
おかげで増税や歳出削減という不人気策は先送りできたが、財政事情は著しく劣化した。一時は政治家や国民の間に醸成されつつあった財政健全化の問題意識を消し去ってしまったのも、きわめて深刻だ。
アベノミクスの実行部隊である日銀を指揮してきたのは、安倍政権が指名した黒田東彦総裁だった。
9年以上にわたって異次元緩…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら