襲名しなけりゃ…… ふわふわ文治がこしらえ、守るもの
井上秀樹
「名前の重さは感じない方なんで」。十一代目の名跡を継いだ10年について聞くと、桂文治はふえっふえっと笑った。ふわふわと振る舞うが、芯には揺るがぬ柱が立っている。
襲名披露興行を一通り終え、「燃え尽き症候群みたいになっちゃったんですよ。これはいけないなあ」と、規模の小さい落語会を開くようにした。数十人に演じると「詰まったりとか、忘れてるなとか、ごまかしがきかない」からだ。
「お若伊之助」「水屋の富」「茶金」と、久しぶりに高座にかけてものにした噺(はなし)がある。「最初は教わった方の呼吸でやって、慣れてくると受けなくなるんです。しばらくお蔵に入れとくと、体ができて、自分の間で再び受けるようになる」。何度も口演し、体にしみこませていく。
落語研究会、紀伊国屋寄席…