第6回言い訳しない お客さんはそこに 本番でわかった 9月・初舞台

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井上秀樹

俳優の仲代達矢が主宰し、厳しい役者修業で知られる無名塾に、5年ぶりの新人が入りました。5月のオーディションから追ってきた新人たちは、ついに「いのちぼうにふろう物語」の初公演を迎えました。

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 「私は100%の力を注げるものがあるならば、人生の全てをかけてそれを全うしたい」

 8月上旬、東京・中野の劇場テアトルBONBONに、無名塾25期生の円地晶子(44)は立っていた。パフォーマンスユニットTWTの舞台「イッツマイライフ2022」だ。

 出演予定の役者が病気で降板し、本番1カ月前に代演が決まった。主宰・脚本の木村孔三は、役とセリフを円地に合わせて書き換えた。

 「ジパングの舞台業界はずっと以前から苦しんでおる。感染症など関係ない。この業界の努力が足りんだけだ!」「今だってパワハラや、補助金目当ての適当な芝居づくりが横行しておる。そんな業界に未来などあるはずがない!」

 自分がやってきたものを揶揄(やゆ)するごとく過激なセリフに、「こんなことやっていいのかな」と一瞬、ためらった。それでも、現実との境を見失うほど演劇に没頭する劇団の代表という役。思い切りよく発したセリフは、劇場の外まで聞こえるほど、明瞭に深く響いた。およそ100席の小劇場で繰り広げられるラブコメディーに、リアルな色が加わった。

 無名塾をやめようと考えたことは何度かある。つらい修業の間も、先にやめた先輩や同期生がテレビや映画で活躍するようになったころも。

 いまも続けているのは「やめ…

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