女王エリザベス2世は、英国で最長の70年間在位した国王として、英国史に名を残すにとどまらない。伝統が失われ、市民の関心が薄れた現代社会で王室はどんな役割を担うべきか、そもそも必要なのか。不断の問いに確固たるモデルを示した人物として、世界史に刻まれるに違いない。
1926年、ロンドンに生まれた時、エリザベス2世が将来、国王の座に就こうとは、誰も予想しなかった。父は次男であり、国王の座は父の兄、つまり女王の伯父とその子孫に引き継がれるはずだった。誕生したのは宮殿内でなく、母の実家が所有していたロンドン中心部のビルだったが、それも跡継ぎと見なされなかったからだといわれる。
しかし、エドワード8世として即位した伯父は36年、在位1年に満たない中で、離婚歴のある米国人と結婚するために王位を捨てた。世にいう「王冠をかけた恋」だ。その弟がジョージ6世として即位し、長女のエリザベス2世は10歳にして、将来の女王と目されるようになった。
「大英帝国」没落に危機感 市民の中へ
第2次世界大戦を乗り切った…