藤沢里菜と里見香奈 「遠くまで歩こう」 出会いの時、分かち合う夢

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北野新太
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 囲碁の藤沢里菜女流本因坊(23)が8日の第78期本因坊戦最終予選決勝で大竹優六段(20)に敗れ、女性初の三大棋戦(名人戦棋聖戦、本因坊戦)リーグ入りの偉業は成らなかった。これからも挑戦は続く。もうひとつの盤上には思いを分かち合える人がいる。

藤沢里菜、里見香奈―。それぞれ囲碁と将棋の世界で女流の頂点に君臨する二人には知られざる友情がある。互いの存在や言葉に励まされ、女性初の偉業に挑む両者。意外な共通点があった。

 敗北を語る声は途切れた。

 数秒間の沈黙が広がった。

 藤沢は言葉を探していた。

 「成長していると思っていたので……なんだろ、前よりは近づいているかなと思ってたんですけど、まだ実力が足りなかったかなと思いました」

 現役棋士485人のうち、リーグ参加者は名人戦9人、棋聖戦6人、本因坊戦8人に限られる。届かなかった「黄金の椅子」に座るには何が必要か、と問われると再び黙考する。そして、自分を責めるように少し笑った。

 「まだ入れないということは実力が不足していたということなので、頑張りたいと思います」

     ◇

 決戦迫る8月末の夜、藤沢は素直な思いを明かしてくれた。戦う前の顔ではなく、笑顔のままに。

 「私……女性初だからリーグに入りたいわけじゃないんです。意識したことも気にしたこともなくて。ただ、みんなが目指す黄金の椅子に座って打ってみたい、楽しそうだなって。トップ棋士と(持ち時間各)5時間の碁を打てるのは夢のような空間だから」

 最高峰で強者と戦いたい。勝負師として生きる者の本音だった。

 「性別による力の差はあるのかもしれないですけど、自分はあるとは考えてはいないです。上に行けないのは棋士として未熟なだけだから。でも、リーグに入れば何かを得られるかもしれません。先にある究極の何かは、まだ描けてはいないけれど」

 藤沢の決意は、ある言葉と重…

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