第3回解任された検事「服役しても更生しない」 納得できない母、今も戦う

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サンフランシスコ=五十嵐大介
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 6月7日夜、米サンフランシスコ郡のチェサ・ブーディン地方検事(当時)のリコール投票日。サンフランシスコ湾を望むレストランの屋外に、ブーディン氏の支持者たちが集まっていた。

 ブーディン氏は「革新派」と呼ばれる検事の一人だ。犯罪者の長期にわたる収監を問題視。収監者数を減らし、更生に重点を置くべきだと訴えてきた。

 夜9時ごろ、リコール成立の見通しだと地元メディアが報じた後、ブーディン氏が会場に現れた。やややつれた表情で、家族に囲まれて現れたブーディン氏は、たるの上に乗って演説を始めた。

 「敗北確定」が報じられたにもかかわらず、勝利演説のような前向きな言葉が多かった。「我々の運動はまだ始まったばかりだ」。ブーディン氏は拳を振りかざしてそう訴えた。

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阿部華子さんが亡くなった事件の背景をたどると、米国が抱える刑事司法の問題が浮かびました。

 投票結果は、リコール賛成票が12万2588票、反対票が10万177票。サンフランシスコ市を二分する戦いは、ブーディン氏の敗北で終わった。

「私の両親は服役、恥ずかしく思っていた」

 リコール運動が展開される大きなきっかけになったのが、2020年12月31日に阿部華子さん(当時27)が車にはねられて死亡した事件だった。

 車を運転していたトロイ・マカリスター被告(46)=自動車運転過失致死罪などで起訴=は、事件の8カ月前の20年4月に仮釈放されていた。同年1月に地方検事となったブーディン氏が、司法取引による仮釈放に同意したためだった。マカリスター被告は仮釈放後、華子さんらをはねて死なせた事件までに5度も逮捕されながら起訴されず、数日の勾留の後に釈放されていた。事件の日、マカリスター被告が乗っていたのは盗難車で、逮捕時には薬物反応もあった。直前には現場近くの飲食店に強盗に入ったとされる。

 リコール選挙中の5月下旬、市内の公園で支持を訴えていたブーディン氏に、マカリスター被告の扱いをどう考えているのかを尋ねた。

 「ハナコに起きたことは、ひ…

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